スペイン代表、黄金期から凋落へ。日本がつけ込むべきポイントは見えている

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

スペイン代表・強さの秘密(3)
連載(1)「スペイン代表は欧州の強豪ではなかった。弱いうえにつまらなかった暗黒時代」はこちら>>

 2005-06シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)を制したのはバルセロナだった。スタッド・ドゥ・フランスで行なわれた決勝でアーセナルを破り、1991-92シーズン以来2度目の欧州一に輝いた。時のルイス・アラゴネス監督率いるスペイン代表も、この前後からバルサ的なサッカーにシフトしていく。中心選手もレアル・マドリードの看板選手ラウル・ゴンサレスからバルサの看板選手シャビ・エルナンデスにシフトした。2006年ドイツW杯は決勝トーナメント1回戦で敗れたが、2年後のユーロ2008で大輪の花を咲かせることになる。

 まず、準々決勝でイタリアにPK勝ちしたことが大きかった。ようやく幸運が巡ってきたという感じだった。1984年の欧州選手権フランス大会以来となる国際大会でのベスト4入りを果たしたスペインは、続く準決勝でロシアと対戦した。誰もが相手はオランダだと思っていた。しかしフース・ヒディンク監督率いるロシアは、準々決勝でオランダにまさかの勝利を収めていた。監督采配が冴え渡った結果だとは、現場で取材観戦した実感である。

 準決勝。スペインは苦戦を強いられた。ヒディンクマジックにはまるかのように、身動きが取れなくなっていた。

 中盤は左から、ダビド・シルバ、シャビ・エルナンデス、マルコス・セナ、アンドレス・イニエスタの4人が並んでいた。サブのメンバーにも、シャビ・アロンソ、セルヒオ・ガルシアが名を連ねていた。スペインは文字どおり中盤天国を形成していた。その一方で、サイドアタッカーと呼べる選手がいなかった。せいぜいサンティ・カソルラぐらいに限られていた。中盤選手が真ん中に固まる傾向は、大会の前半から露わになっていた。右サイドハーフのイニエスタが内に入るケースはとりわけ目立った。

 この準決勝戦も例外ではなかった。スペインの右サイドは右サイドバック(SB)セルヒオ・ラモス1枚になっていた。言い換えればロシアは、左サイドで数的優位を保つことになった。前半31分、34分とロシアは決定的ともいうべき惜しいチャンスを掴んでいるが、いずれも左サイドで作ったチャンスだった。スペイン危うし。このままではヒディンクの術中にはまる。

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