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ビジネスに乗り出す元スター選手たち。成功者サモラーノはコロナ破綻 (3ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 このスポーツシティの成功により、一時期は個人資産が8000万ドル(約88億円)にもなると報道され、チリ実業界の成功者のひとりに数えられた。

 しかし、少し前から赤字傾向となっていたのに加えて、このコロナ禍でさらに大きな打撃を受けて、サモラーノの会社は破産。現在はスポーツシティも競売にかけられている。この1月で54歳になったサモラーノは、現在テレビの解説者などをしながら、起死回生を図っているという。

 バイエルンの元キャプテンでドイツ代表だったシュテファン・エッフェンベルクは、いったんは指導者として歩み始めたが、その後、転身。銀行員というサッカー選手らしくない職業についている。ドイツのテューリンゲン州にある「バート・ザルツンゲン・シュマルカルデンVR銀行」で、サッカーチームへの融資などを担当しているという。ドイツのウェブサイト「Tオンライン」のインタビューに彼はこう答えている、

「この仕事をできることを嬉しく思う。一見これまでのキャリアとまるで無関係のように見えるが、実は大いに関係あるからだ。財政面からサッカーチームを助けることができる」

 銀行側にとっては、サッカーの世界とのパイプの太いエッフェンベルクから情報を集めようという目的のほかに、話題性も狙いだったようだ。実際、この異色の組み合わせから、VR銀行は別名エッフェンベルグ銀行とも呼ばれ、ドイツで一気にその名を知られるようになった。ドイツの週刊誌「シュピーゲル」によると、アトレティコ・マドリードへの1000万ユーロ(約13億円)の貸付もエッフェンベルクが行なったという。

「選手の購入から新スタジアムの建設費といったものまで、チームのファイナンシャルのすべてをサポートする。私のこれまでの経験が、銀行にとっての正しい判断材料になってくれればうれしい」

 そのために、エッフェンベルグは金融や融資について学ぶために経営の学校に通うなどして、この部門のリーダーとなれるよう努力した。

「まだまだ学ばなければいけないことはいっぱいある。サッカーと同じだが、『ここまででいい』ということはない」

 意気揚々に語っていたエッフェンベルクだが、この銀行もコロナ禍で破綻。エッフェンベルクも現在はそのポストを失った状態にあるという。
(つづく)

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