ビジネスに乗り出す元スター選手たち。成功者サモラーノはコロナ破綻

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

あのスーパースターはいま(5)前編

 イタリアの選手協会(AIC)によると、約75%の選手が引退後もサッカーの世界に残りたいと希望しているが、実際にその希望がかなう者は10%にも満たないという。監督のライセンスを取っている者も多いが、それを使う機会はない。引退後の身の振り方は、サッカー選手たちにとって大きな問題である。

 そこでAICは今、選手や元選手たちを対象に、こんなセミナーを定期的に開催している。

「サッカー選手からビジネスマンに転向する方法」

 可能性の少ないサッカー界に残るよりも、別天地で羽ばたこうというわけだ。そんな新たなビジネスの世界に挑戦している選手たちを紹介しよう。

 一時は「ビジネスで最も成功したサッカー選手」と言われたイバン・サモラーノ(チリ) 一時は「ビジネスで最も成功したサッカー選手」と言われたイバン・サモラーノ(チリ) まずはヴァンサン・カンデラ。フランス代表の一員として1998年の自国開催のW杯でチームを優勝に導いた主力のひとりだ。豊富な運動量でサイドをアップダウンし、攻守ともにチームに貢献した。彼はローマで8シーズンを過ごし、中田英寿らとスクデット(セリエA優勝)も勝ちとっている。フランチェスコ・トッティが「最も息が合った」と語っていた選手のひとりだ。

 カンデラはローマで最も愛されている外国人選手のひとりであり、彼もまたローマというチームと街を愛している。引退試合もローマで行ない、その後もずっとローマに留まっている。「妻もローマの人間だし、2男2女もここで生まれている。ローマは俺の心の町だ」とカンデラは言う。

 そのカンデラは早くから飲食業に興味を持ち、ローマがスクデットをとった2001年にはすでにレストランを持っていた。現在はフランスに3つのレストランを所有し、ローマ郊外にも大きなヴィラ・レストランを持っている。

「もともとは自分で住んでいたが、あまりにもすばらしい場所だから皆にもおすそ分けしたいと思ったんだ」とラジオのインタビューで言っているレストランは「テヌータ・デッラ・アンジェリカ(アンジェリカファーム)」。ローマの町が一望できるところに立つ。

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