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ベンゲル最大の功績は、名古屋から移って
すぐに断行したプレミア改革 (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 まず真っ先に取り組んだのが、食事面の改善をはじめとする選手の体調管理だった。当時のイングランドサッカー界にはまだアルコール文化が深く根づいていて、たとえばアーセナルではFWポール・マーソンやDFトニー・アダムスがその筆頭格。試合後の飲酒はもちろん、二日酔いで練習場に現れるのがまだ日常茶飯事というなか、ベンゲルは科学的根拠に基づいた体調管理の重要性を説き、ベテラン選手を中心に選手たちのパフォーマンスはみるみるうちに向上した。

 今では当たり前の話だが、当時のイングランドサッカー界では画期的なことだった。

 同時に、ボールを直線的に蹴り込む「キック&ラッシュ」が主流だったプレミアリーグにおいて、パスをつないでサイドから崩すといった大陸のモダン戦術を導入したことも大きかった。その大陸のスタイルを浸透させるために、当時ACミランでくすぶっていた19歳のMFパトリック・ヴィエラ、ストラスブールからベテランのDFレミ・ガルデを補強。いずれも、ベンゲルが監督に就任する前からフロントにリクエストしていた新戦力である。

 果たして初年度からリーグ3位という好成績を残すことに成功したベンゲルには、いつしか追い風が吹くようになった。そして1997−1998シーズン、フランス代表MFエマニュエル・プティとオランダ代表FWマルク・オーフェルマルスを新戦力として迎え入れたベンゲル体制2年目には、アレックス・ファーガソン監督率いる首位マンチェスター・ユナイテッドを終盤で追い抜き、プレミアリーグ優勝を達成したのである。

 もちろん、英国外出身監督がプレミアのタイトルを手にしたのは初めてのことだった。

 さらにもうひとつ、ベンゲルの功績として忘れてはいけないのが、若手を発掘するために独自のスカウト網を世界中に広げ、クラブの財政負担を軽減させるスカウティングシステムを構築したことである。

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