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クロップ監督退任でドルトムントと香川真司が失うもの (3ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by Getty Images

 その直後、香川がマンチェスター・ユナイテッド移籍を決めた時には「ここはお前の家だから、いつでも戻ってこい」と、泣かせるコメントで送り出した。2人の関係がわかる温かいエピソードには事欠かない。

 今季は低迷するチームを象徴するかのように、香川の胸ぐらをつかんで怒鳴りつけているように見える写真が出回ったことがあった。でもそれは熱さの表れに違いない。クロップと選手の間には親密なコミュニケーションがあった。一方、香川が復帰した際に、負傷を隠してプレイしようとしたことには怒りを隠さなかった。「シンジはケガを隠していた」と、わざわざメディアに語ったのは、期待の大きさの裏返しだったのかもしれない。

 2010~2011優勝メンバーであるFWバリオス(現モンペリエ)は、チームを離れた後、指揮官に「自分に戻る場所があるか?」と、直接電話をかけてきたことがあるという。ユナイテッドで出番を失った香川がドルトムントに戻りたいと思ったのも、そして戻ることができたのも、クロップがいたからこそ。ドルトムントはそんな求心力を失う。

 最大の理解者を失う香川の今後について心配する前に、クロップがいるドルトムントの姿をきっちり目に焼き付けておきたいと思う。

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