クロップ監督退任でドルトムントと香川真司が失うもの

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by Getty Images

 一つの時代が終わる。ドルトムントのユルゲン・クロップ監督退任のニュースに、そんな感慨と寂しさを覚えた。

 練習場やスタジアムで、選手よりも大きな声援を浴び、サインを求める行列ができてしまうのがクロップだった。2008年に監督に就任すると、経営的にも順位的にも低迷していたドルトムントを立て直し、バイエルンの唯一のライバルとなった。走力をベースにしたさわやかなサッカーは、ブンデスに新風を吹き込んだ。チャンピオンズリーグ(CL)でも決勝に進出し、欧州中から注目を浴びた。

 だが、そんな功績だけによって彼の人気が高まったというわけではない。試合中、得点シーンで喜びすぎて肉離れをしてしまうような情熱と笑顔、ユーモア溢れるコメントの数々。純粋な生まれつきの人気者。そんなクロップがドルトムントを去る。
  
今季限りでの退任を発表したクロップ監督(ドルトムント)今季限りでの退任を発表したクロップ監督(ドルトムント) クロップの人気を証明したのが、シーズン中にもかかわらず、インターネットで生中継まで行なわれた15日の退任会見だ。アーセナルのベンゲル監督は「サーカスのよう」と表現したが、ドイツ中の興味、関心を呼ぶこととなった。CLどころかヨーロッパリーグ出場権獲得さえ怪しくなった今季、唯一残るドイツ杯のタイトル獲得に向け、最後のカンフル剤として機能するはずだ。

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