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清武弘嗣はなぜ、過酷なリハビリに挑み続けるのか 「温かい応援に甘んじず、結果で応える姿を取り戻さなきゃいけない」 (4ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 でも、そういう人たちと接するたびに、『こんなに地元に愛され、応援してもらっているクラブが今のままでいいのか?』という思いが湧いてくるというか。本来、プロクラブというのは、応援してもらうことに対して、サッカーの面白さや勝つ楽しさを伝えること、"結果"で応えることが役目であるはずだと思うんです。なのに、今の大分は『勝っても負けても応援してもらえるだろう』という甘えがどことなく漂っていて、プロクラブの本質を見失っているようにも感じます。

 でも、それではこの先、応援してくれる人の数がどんどん減っていってしまうと思うんです。実際、地元の人と話していても『私たちは応援しているけど、あまりに勝てないから孫はもう応援に行っていないわ』みたいな声もよく聞きますしね。だからこそ、チームだけではなく、もっとクラブ全体で勝つことを求めなくちゃいけないというか。

 実際、去年、今年と2年続けてJ2の残留争いに巻き込まれたことにも、もっと危機感を持たなければいけないし、温かい応援に甘んじず、しっかりと結果で応える姿を取り戻さなきゃいけない。ケガをしている今、こういう厳しいことを言うのは心苦しいんですけど、でも僕は大分が勝つ姿を取り戻すためにこのクラブに戻してもらったと思っているので。その覚悟を来シーズンは自分も含めてしっかり示せるクラブ、チームでありたいと思っています」

 以前に在籍していた時はもちろん、チームを離れてからも、常に大分の結果を気にかけ、大分への愛着を持ち続けてきた清武だからこその言葉だろう。かつて在籍していた2008年にJ1リーグでクラブの歴代最高順位となる4位に上り詰めたり、ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)で初タイトルを手にした時の、地元の盛り上がり、熱狂を知っている彼だからこそなおさら、その姿を取り戻したいという思いが強いのかもしれない。

 そのためには、当然ながら自分自身も来シーズンこそしっかりとピッチに立って、チームを牽引しなければいけないという思いもある。

「先(前編)にも話したとおり、自分が大事にしてきたプレーの感覚的なところが失われているのを体感したら、その時は引退します。でも、今はまだそうじゃないから。

 それに真司くん(香川/現セレッソ大阪)にしても秋くん(倉田/現ガンバ大阪)にしても、アキちゃん(家長昭博/現川崎フロンターレ)にしても、蛍にしても、かつてのチームメイトがみんな、めちゃくちゃ頑張っていますからね! 彼らの姿を見ていたら、自分も負けていられないって思います。

 ケガのたびに、みんなが連絡をくれて『まだやるでしょ』『どうせキヨはまた(リハビリを)頑張っちゃうんだよね』と言ってくれることにも勇気をもらっています。あっ、そういえば、ひとりだけ、僕に『もういいでしょ!』って言ってくれる先輩がいたな~」

 その先輩だけは、ケガのリリースが出るたびに真っ先に連絡をくれて「引退を勧めてくる」そうだ。

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