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【Jリーグ】鹿島アントラーズ「最激戦区」ボランチで存在感 三竿健斗が29歳でアップデートしている理由 (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke

【中村憲剛の境地に踏み入れた】

 自主練をともにする舩橋佑とは、毎日の日課であることから「ハミガキ」と呼んでいるという。

「自分自身に技術が足りていないとは、ずっと思っていました。だから、以前もその練習は、見よう見まねでやっていたんですけど、ひとりが意識するだけでは変わらないんですよね。チーム全体が同じ意識を持つからこそ、パスの質やタイミングも変わってくる。同じ視点で練習しているので、今までよりもうまくなっていることを実感します」

 鬼木監督の指導を受けて、技術の習得、はたまた向上には、ボールを止める側だけでなく、ボールを蹴るパサー側が重要なことを痛感している。

「ボールの芯をとらえたパスでなければ、受けるほうは止めにくい。逆にあえてボールの上のほうを蹴って回転をかけて、わざと止めづらいパスを蹴る時もありますけど、メッセージ性のあるパスでなければ練習にはならない。

 今ではパスを受ける四角(範囲)もかなり小さくしていますけど、ボールの当て方(トラップ)、身体の力感、どのタイミングで軸足のステップを踏むか、身体の向きを変えるかもわかってきましたから」

 試合で出せてこその練習である。身体の強化、技術の向上は、同時にプレーの幅へとつながっている。

「パスが来た時に、ボールをそれほど見なくても止められる自信があるので、その分、首を振って周りを見たり、相手を見たりする余裕が生まれています。だから以前よりも、ワンタッチでテンポよく前につけるパスの本数も増えているかな、と」

 昨季まで鬼木監督が率いて7つのタイトルを獲得した川崎フロンターレで、象徴としてプレーしていた中村憲剛に、かつて「止めて蹴る」の真髄について聞いたことがある。フロンターレのレジェンドは、その本質について「ボールを正確に止めて蹴ることが大事なのではなく、それによって周囲を見る時間が確保できることが大事なんです」と強調した。

 まさに三竿は、同じ感覚を抱いており、その境地に足を踏み入れようとしている。

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