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サッカー日本代表のブラジル戦勝利の裏で忘れてはいけないこと 奇襲だけではワールドカップベスト8は難しい

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

 3対2の大逆転勝利。日本が史上初めてブラジルに勝利した東京スタジアムでの一戦は、まるでカタールW杯のドイツ戦やスペイン戦の再現と言えるような試合だった。

日本は71分、CKから上田綺世のヘディングシュートで逆転ゴールを決めた photo by Ushijima Hisato日本は71分、CKから上田綺世のヘディングシュートで逆転ゴールを決めた photo by Ushijima Hisatoこの記事に関連する写真を見る 前半は日本が相手にほぼ一方的に支配され、ほとんど勝機はうかがえなかったものの、後半は一転して開始からアグレッシブにプレッシャーをかけて相手を驚かせると、相手がその落差に順応できないうちに、短時間でゴールを重ねて逆転。その後は、相手の反撃を自陣で守り抜いて勝利をもぎとった。

 2度あることは3度ある、とはよく言うが、森保体制になって3度も同じようなかたちでW杯優勝国から金星を挙げたことを考えると、もはやこの戦い方が強豪との試合用の奇襲戦法として定番化しそうな気配さえある。

 いずれにしても、これまで勝てなかったブラジルに勝利し、日本サッカー史に新たな1ページが刻まれた。同時に、今回の成功体験が選手やコーチングスタッフに自信を与えたのは間違いないだろう。その意味では、滅多にお目にかかれないブラジルの自滅劇ではあったが、日本がその隙を逃さずに勝利に結びつけたことは称賛に値する。

 その一方で、この試合が来年に控えたW杯本番に向けた強化試合である点も忘れてはいけない。森保一監督がよく口にする「チームとしての積み上げ」という視点に立てば、今回のブラジル戦の勝利を「点」で見るだけはなく、「線」で見る必要もある。

 果たして、9月シリーズの2試合、とりわけ10月シリーズ初戦となった4日前のパラグアイ戦で浮き彫りになった問題点は、この試合で改善できたのか。自分たちが主体的に戦うサッカーを実現するために用いているはずの「3-4-2-1」は機能していたのか。そこに焦点を当てて振り返ってみると、試合の評価も変わってくる。

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著者プロフィール

  • 中山 淳

    中山 淳 (なかやま・あつし)

    1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)

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