青森山田に敗れ続けてもまだ挑む 高校サッカー八戸学院野辺地西の冒険「ふり向くな、君は美しい」 (3ページ目)

  • 土屋雅史●取材・文 text by Tsuchiya Masashi

【青森山田の壁を越えられず、わかったこと】

 決勝翌日。まだ肌寒さも残る朝9時から、八戸学院野辺地西は十和田湖にほど近いグラウンドで再始動を切っていた。もう3日後には新チームで臨む県新人大会が。さらに1カ月後にはプリンスリーグ東北昇格を懸けたプレーオフが控えている。この日は県新人大会を戦う1、2年生チームと3年生チームの紅白戦も行なわれ、選手たちはピッチ上でバチバチと火花を散らせていた。

決勝翌日から次に向けての練習が始まった photo by Tsuchiya Masashi決勝翌日から次に向けての練習が始まった photo by Tsuchiya Masashiこの記事に関連する写真を見る 2年生GKの喜村孝太朗は先輩の涙が忘れられないという。「PKを与えてしまった先輩が責任を感じてメッチャ泣いていたんですけど、自分がPKを止めていたら、まだ十分にやれたゲームだったので、来年は絶対にチームを救えるキーパーになりたいなと思いました」。

 新チームでも主軸としての活躍が期待される阿部は、あらためて感じた想いをこう口にする。「試合に出ていない人もすごく声を出してくれて、ロッカールームでも声を掛けてくれて、そういう3年生を勝たせられなかったのが本当に悔しかったので、来年は先輩たちの分も頑張って、絶対に山田に勝ちたいと思いました」。

 堀田は前日のことを思い出し、時折声を詰まらせる。「自分は兄も野西にいて、山田に負けて悔しい想いをして帰ってきたのを見て、もともと県外に行こうとしていたんですけど、最後の最後に『やっぱり野西に入って、山田に勝って歴史を変えることに意味があるな』と思ってここに来たので、試合が終わった瞬間はこれまでやってきた3年間を思い出してしまいましたし、今まで支えてくれた人に恩返しできなかったのは心残りです」。

 ただ、青森山田の壁を越えられなかったからこそ、わかったこともある。それは日常の環境の大切さ。彼らはプレミアリーグに身を置き、世代でもトップレベルの相手としのぎを削っている。一方で自分たちはプリンスリーグ昇格にあと一歩まで迫りながら、県リーグにとどまっていることで、1年を通じて図れる成長の幅には大きな差があるのを肌で感じていた。

「来年の新チームが山田に勝つためにも、日常の水準を上げるためにも、最後は自分たちがプリンスリーグに昇格して、後輩に置き土産を置いていけるように、ここからまた切り替えてやっていきたいです」。堀田は力強く言いきった。

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