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米倉恒貴が古巣・ジェフでの戦いにかける熱き想い――「あのとき」のことが色濃く残っている (4ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 サッカー人生であんなにも泣いたのは初めてでした。あの時の悔しさ......なんて言葉では言い表わせない感情を知っているのは、今のジェフの選手では僕だけですけど、これまでジェフでプレーしたいろんな選手がここに戻って成し遂げようとして、できなかった昇格を、選手としてしっかりチームの力になりながら成し遂げたい。そう思っての、30歳でのジェフ復帰だったので。

 結果的にここまでの5シーズンはそれを実現できていないけど、最初に話したとおり、今年は何がなんでもやり遂げたいし、このチームならやり遂げられると信じています。ケガもあってピッチに立てていない今は、自分が昇格させるというより、みんなに昇格させてもらうって感じになっちゃうけど」

 もちろんそのためには、自身も残り少なくなったシーズンを、全力で戦いきる覚悟でいる。痛めている右足首のリハビリには日々、懸命に取り組んでいるものの、それが今年中の戦列復帰につながるのかはわからない。米倉がベテランの最たる仕事だと考えている「ピッチのプレーで示し、引っ張る」という役割も、この最終盤で叶うのかも不透明だ。

 だが、それでもサッカーと向き合う姿に変わりはない。長いキャリアで貫いてきたモットーのもと、最後まで。

「僕のプレースタイルは、走るとか、いいクロスボールを入れるとか、ではなく、全力でやりきること。練習でも、試合でも、リハビリだったとしても、100%を注ぎきって、戦い抜くこと。

 最年長の僕がその姿を示すことで『俺らもやるしかないよな』ってチームメイトに思わせるのが役割だし、チャンスが来たときにその姿を示すために今の時間があると思っています。歳のせいか、まぁ、治りが遅くて自分に腹が立つけど(笑)、それでも、練習に戻って、100%でプレーできる自分なら、絶対に試合でも力になれる自信はあるので。

 残りのシーズンはとにかく、それを信じてやりきることで、このチームの一員であり続けたい。残念ながら僕にはJ1昇格の経験値がなくて、自分が今、最高だと思っているこの雰囲気が、昇格に見合うものかは正直、わかりません。でも、僕は自分が最高だと信じているこのジェフで、勝ちたいと思っています」

 11月10日に戦う最終節を前にした千葉の順位は6位。自動昇格が可能な"2位以内"は実現できなかったが、J1昇格プレーオフ進出圏(3〜6位)は死守している状況にある。その最終節の相手は勝点2差で上をいくモンテディオ山形。千葉と同じ立場にあるチームだと考えれば、かつ、4位のファジアーノ岡山から7位のベガルタ仙台まで、J1昇格プレーオフ進出枠を僅差で競っている状況を踏まえても、難しい戦いになるのは必至だ。

 だが、見方を変えれば、最後まで勝ち続けることさえできれば、J1昇格の切符は自分たちの手でつかみ取れる。

「みんなであと3つ。勝ちきります」

 あの日、流した悔し涙を、うれし涙で塗り替えるために――。

 千葉在籍、13シーズン目。チーム最年長プレーヤーは、そのための戦いを淡々と続けている。

(おわり)

米倉恒貴(よねくら・こうき)
1988年5月17日生まれ。千葉県出身。ジェフユナイテッド千葉所属。八千代高卒業後、2007年に千葉入り。当初は中盤でプレーし、5年目にレギュラーとして定着。2013年からサイドバックに転向。正確なクロスでチームの攻撃をけん引した。2014年にガンバ大阪へ完全移籍。三冠獲得に貢献し、2015年には日本代表にも選出された。そして2019年夏、古巣の千葉へ復帰。チームのJ1復帰のために力を尽くしている。

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