中村憲剛が引退から3年半で学んだこと「指導者の数だけスタイルがある。最初からガチガチに守る発想はない」 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

【特殊なことをやってきた自負はある】

── 判断基準や合格基準も変わってきているのでしょうか。

「そう思います。その意味では、チューターの方はすごく大変だなと思いました。JFA(日本サッカー協会)の指針に則って合否をつけるほうが基準は明確ですからね。当然、最低限の原理原則はあるので、そこからあまりにも逸脱してしまうのはよくありませんが、指導に正解はないので、受講生一人ひとりをみんなでよりよくしてくような場だった、という認識です」

── S級ライセンスを取得したことで、いよいよプロのチームを率いる資格を手にしました。現時点でどういう監督を目指しているのでしょうか。

「まず自分が『こうしたい』という確固たるものを持っていないといけないと思います。そこは講習会でもずっと問われてきたところでした。そこに関しては、自分は持っていると思っています。特殊なことをやってきた自負はありますし。

 ただ、それだけで勝てるかはまったくの別問題で、確固たる部分を持ちながらも、そのチームの編成や状況に合わせて、柔軟に変えてでも勝たせる監督になる可能性もあるし、結果が出なくても意固地にやり続けて浮上を狙う監督になる可能性もある。こればかりは、実際に始めてみないとわからないです」

── 状況に応じて変わる可能性があると?

「自分の考えだけではなくて、クラブからのオーダーも当然あると思います。『このメンバー編成で、この順位を目指してほしい』とオーダーされれば、ある程度現実を見るかもしれないですし。その時のコーチングスタッフだったり、選手の個性や年齢層だったり、クラブのビジョンだったり、すべてを理解したうえでやらなければいけないと思います。

 自分がやりたいことをやるだけでうまくいく世界ではないことは、僕も現役の時からいろんな監督を見てきているので、理解しています。ただ同時に、自分のやりたいサッカーを具現化させるための施策や引き出しをどれだけ持っているかも重要だと、同時に感じています。やっぱり監督は、チームと選手を成長させなければいけない存在であることは間違いないですから」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る