浦和レッズDFホイブラーテンはなぜJリーグへ? 元同僚の「日本自慢」で興味を持った (3ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi

【日本とノルウェーの共通点】

 フットボーラーとしてだけでなく、人間としても成長したい──。そう考えていたホイブラーテンは、20代後半でなおも欧州の高みを目指していくのではなく、自らの人生と人間性に奥行きと幅をもたらしうる選択をした。住み慣れた出生国を離れ、街並みも気候も文化も違う、極東の島国へやってきたのだった。

 別のオプションとしてあったアメリカよりも、変化の度合いは大きい。それだけに期待と同じくらい、不安もあった。

「でも初日から、ここが本当にすばらしい国だとわかったよ」とホイブラーテンは続ける。

「キャスパーが言っていたように、人々にもクラブにも歓待してもらった。空港や駅、お店のなかで言葉が理解できずに困っていたら、英語を話さないのに身振り手振りで親切に助けてくれる人がいたし、当時のレッズには、デンマーク人のアレクサンダー・ショルツやスウェーデン人のダヴィド・モーベルグがいた。似た言葉を話すスカンジナビアのチームメイトがいてくれて、助かったよ。浦和の街にもチームにも、すぐに順応できたと思う」

 日本で生活を始めると、ほどなくしてノルウェーとの共通点にも気づいていった。

「もちろん違いはたくさんあるけど、これは一緒だなと思えたことがひとつあって。日本人もノルウェー人も、物事をきちんと進めていく。その感覚はかなり近いものがあると感じる。日本と比べると、ノルウェーのほうが騒々しいかもしれないけど、どんな物事にもちゃんと取り組み、できるかぎりスムーズに進めようとしていくところは共通していると思う」

 そんな風に新天地に造作なく馴染み、チームには遅れて合流したものの、プレシーズンは順調に過ぎていった。ところが実際に開幕したJ1リーグでは、好スタートを切るどころか、いきなり躓いてしまい、タフな現実を思い知ることになるのだった。

中編「ホイブラーテンが語るJリーグのレベルとプレーの心得」へつづく>>

マリウス・ホイブラーテン 
Marius Hoibraten/1995年1月23日生まれ。ノルウェー・オスロ出身。2011年、リールストロムで16歳でトップチームデビュー。ストレンメン、ストレームスゴトセト、サンデフィヨルド・フォトバルを経て、2020年からはボーデ/グリムトでプレー。国内リーグ2連覇に貢献した。U-17、U-19、U-21と年代別のノルウェー代表の経験がある。2023年より浦和レッズでプレー。2023シーズンはJリーグベストイレブンに選ばれた。

著者プロフィール

  • 井川洋一

    井川洋一 (いがわ・よういち)

    スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

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