青森山田のトレーニングはもはやプロなみ? 仕上げた身体をサッカーに活かす工夫 (4ページ目)
【日本一という目標から逆算した強化】
――トレーナーの立場で見た、今季の選手の印象は?
主将のDF山本虎は、春にヒザを痛めたままシーズンインしてしまったのですが、補強トレーニングや身体作りを頑張って、最後はケガを繰り返さなくなってチームをまとめてくれました。彼は、上半身とのバランスを取るためにお尻周りの筋力を強化しましたし、片足バランスなど機能面の強化も行ないました。
GK鈴木将永は、2年生の時はケガをしていて控えでPKストッパーのような役割でしたが、自分の弱点から逃げずに努力を重ね、強靭な身体を作って幾度もチームを救ってくれました。古川大海GKコーチからは、セービングなど瞬発能力を繰り返し発揮できるようにする課題を指摘されていたので、瞬発系の個別トレーニングを実施しましたし、練習前には誰よりも早くグラウンドに出てストレッチや補強を行なう彼の姿がありました。
やはり、みんながボールを蹴っている間、ケガをしたためにピッチ外でリハビリをしながら葛藤を抱えている様子や、それでも努力をしてきた姿を見ている分、彼らが復帰し、ピッチで活躍して優勝につながったストーリーは、胸を打たれるものがあります。勝った瞬間の表情を見た時は、この仕事をしていて良かったなと思いました。
――今後、どのようにチームをサポートしていきたいですか
2023年シーズンは、夏までの前半戦で主力級の選手がケガで離脱するケースがありました。防ぐことができるケガもあったと思うので、反省点を踏まえて、障害予防の働きかけをより細かく実施していきたいと思います。
現2年生(2024年度の3年生)は、これから主力としてピッチに立つ選手が多いので、オフシーズンのうちにフィジカル面で自信を持たせて、春の遠征に出て行けるようにしたいと考えています。
正木昌宣監督(右から2番目)を囲む高校サッカー選手権優勝時のコーチングスタッフたち。左から2番目が若松佑弥トレーナー photo by Kishiku Toraoこの記事に関連する写真を見る 正木昌宣監督は、常日頃から「ケガが少なくピッチに立ち続けられる選手が、一番いい選手である」と言っています。どれだけ身体が強くてもケガが多い選手は、チームが助けてほしい時にいない状況になりかねず、戦力ダウンにつながってしまいます。
日本一という目標から逆算し、選手、コーチングスタッフ、メディカルが三位一体となりながら、チームの強化や成長を続けていることが青森山田の強みだと思っています。
若松佑弥
わかまつ・ゆうや/1991年生まれ、青森県青森市出身。青森山田高サッカー部では、椎名伸志(カターレ富山)が同期(2009年度の全国高校選手権で準優勝、1学年下にMF柴崎岳/鹿島アントラーズや、GK櫛引政敏/ザスパクサツ群馬がいた)。選手権はマネージャーでベンチ入り。帝京大学の医療技術学部柔道整復学科を卒業後、J2栃木SCアカデミーコーチを務めたのち、2015年にワイズアスリートサポートインコーポレイテッド(現・ワイズスポーツエンターテイメント)に転職、2016年に株式会社AKcompanyが運営するワイズ・パーク青森センター店の開業に携わり、現在は統括責任者を務める。2015年から青森山田高サッカー部のチームトレーナーとしてチームに関わっている。
著者プロフィール
平野貴也 (ひらの・たかや)
1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカー、バドミントン、カバディ等、スポーツ全般を取材している。
【写真】高校サッカー選手権で注目された選手たち
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