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Jリーグ「今季のベストゲーム&最も印象に残るシーン」は? 識者5人が振り返る (5ページ目)

【劇的ハットトリックを決めた選手は海を渡った】
浅田真樹(スポーツライター)

ベストゲーム:第23節、川崎フロンターレ対ヴィッセル神戸(8月12日)
印象的シーン:伊藤涼太郎のハットトリック(4月15日)

「今季のベストゲーム」と聞いて、正直、すぐに「これだ!」と思い浮かぶ試合がない。川崎フロンターレと横浜F・マリノスが質の高いサッカーで優勝を分け合った過去6シーズンに比べると、今季は全体的にレベルが低下した印象が拭えなかったからだ。

 そのため、ハイレベルな攻防とか、エンタメ性に富む展開とか、本来のベストゲームとは意味合いが異なるが、今季の優勝争いの流れを決定づけた試合という意味で選んだのが、等々力陸上競技場で行なわれた川崎対ヴィッセル神戸戦である。

 互いにボールを保持して攻撃を組み立てようにも、ミスが多く、チャンスを作れない展開で進むなか、ならばと、相手の背後へ大きく蹴ることをいとわなかった神戸が、前線の大迫勇也の個人能力を生かして勝利を収めた。決勝点は大迫が直接決めたFK。川崎の凋落と神戸の躍進という光と影が鮮明に表れたという意味で、今季J1を象徴する試合だった。

 一方、今季の印象的なシーンとしてすぐに思い浮かんだのは、第8節、アルビレックス新潟対アビスパ福岡戦(4月15日)での伊藤涼太郎のハットトリックだ。

 0-2からひとりで3点を叩き出し、新潟に大逆転勝利をもたらした展開もさることながら、そのうち2点を、決して簡単ではないワンタッチシュートで、しかも後半アディショナルタイムに決めてのハットトリックは、あまりに劇的なものだった。

 そんな伊藤、つまりは今季J1の顔にもなりえたはずの旬な選手が、シーズン途中に海を渡ってしまった(シント・トロイデンに移籍)という事実に、Jリーグが直面する厳しい現状が表れているようで、そうした背景も含めて印象深い。

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