Jリーグ「今季のベストゲーム&最も印象に残るシーン」は? 識者5人が振り返る (3ページ目)
【ファンの期待を凌駕する極上のエンターテイメント】
原山裕平(サッカーライター)
ベストゲーム:第16節、柏レイソル対北海道コンサドーレ札幌(6月3日)
印象的シーン:広島ビッグアーチのラストマッチ(11月25日)
予想を超える乱打戦という意味で、柏レイソルと北海道コンサドーレ札幌の一戦は単純に面白い試合だった。
途中までは札幌の一方的な展開となりかけたが、リードしても攻めの姿勢を忘れないコンセプトが裏目に出て、札幌は3-3の同点に追いつかれてしまう。金子拓郎のゴールで再び突き放しながら、土壇場(後半46分)にセットプレーから失点した時には、さすがにこのままドロー決着となるかと思われた。しかし、その2分後に札幌に決勝点が生まれるのだ。
流れを失いかけても攻撃スタイルを貫き、最後の最後に勝利(4-5)を掴み取る。その拙い試合運びは突っ込みどころが満載だが、ノーガードの殴り合いこそがミシャサッカーの真骨頂だろう。試合前に喫煙所で「今日は3点とられても、4点とって勝つ」という札幌ファンの会話を耳にしていたことも、この試合の劇的さを色濃くする。ファンの期待をも凌駕する極上のエンターテイメントだった。
印象的だったのは、エディオンスタジアム広島(広島ビッグアーチ)の最終戦だ。主役は在籍20年目を迎えた青山敏弘で、演出したのはミヒャエル・スキッベ監督である。スキッベ監督は今季一度もスタメン出場のない青山に対して、1カ月前から起用を明言していた。そして青山はこの試合に向けて入念に準備を進め、「自分のすべてが詰まっている」というビッグアーチのラストマッチで見事に躍動してみせた。
さらにスキッベ監督は終盤に、今季は出番か限られていた柴崎晃誠と柏好文の2人のベテランをピッチに送り込み、今季限りでの引退を表明していた林卓人にも花を持たせた。いずれも長年ビッグアーチでプレーしてきた選手たちだ。3-0でガンバ大阪を下し、3位に浮上するという結末も絶妙で、広島の"聖地"の最終章を飾るにふさわしい、スキッベ監督の小憎らしいシナリオだった。
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