「ビジネスクラスの航空券は無理」ヴァンフォーレ甲府、ACL初体験は予算との戦い 「ピーター・ウタカはエコノミーで機内食を...」 (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

【ビジネス航空券の値段を聞いて無理だと諦めた】

 試合後、そんなことばかりが気になったので、帰国後に競技運営部の植松史敏副部長に聞いてみると、想像通りの答えが返ってきた。

「基本的には旅行代理店の提案を見て判断するわけですが、こちらは何もかもが初めてのことなので、とにかく大変でした。お恥ずかしい話ですが、名前を入れないと航空券の予約ができないとか、航空業界のルールも理解していませんでしたし、初戦がメルボルンに決まったのも直前のことだったので、迷っている余裕もありませんでした」

 植松さんは、選手とスタッフのACL登録手続きから、試合の運営面に関するすべての窓口業務をこなしながら、トラベルマネージャー的な仕事も兼務する。普通は2~3人で担当するような仕事をひとりで受け持つところも、地方のスモールクラブならではだ。

 右も左もわからなかった植松さんは、何をどうすればいいのか、ACLに慣れているJ1クラブの担当者にいろいろなことを事前に聞いたそうだ。

「ただ、聞いてみましたが、そもそも悩みの種が僕らとは違っていたんですよね(笑)」

 通常、ACLに出場するようなクラブでは、航空券は人数分のビジネスクラスを予約する。ビジネス予約なら、直前に搭乗者を変更できるからだ。もちろん航空券代は高くつくが、それが可能な年間予算でクラブが運営されている。植松さんが担当者と話してわかったのは、彼らの悩みはいかに必要な人数分のビジネス席を確保できるか、という悩みだった。

 しかし、ヴァンフォーレは事情が違う。悩みの種は、いつも予算との兼ね合いだ。

「代理店の人にメルボルン往復のビジネス航空券の値段を聞いた瞬間に、それは無理だと諦めました。本当に大丈夫ですかと心配されましたが、事情を説明して、それならばとエコノミーの団体券45席を確保できるという提案をもらったので、それを予約することにしました。それと、ACL登録選手は計35人で、スタッフ15~16人を想定していたので、あと5席必要ということで、団体よりも10万円ほど高くなりますが、個人航空券を5人分プラスしておさえました。

 結局、直前に遠征メンバーが20選手に絞られ、15人分はキャンセルすることになってひとり2~3万円のキャンセル料が発生しました。でも、座席を確保しておかないと、メンバーに入った選手を遠征に連れていけない可能性も出てくるので、そういう意味では、できる範囲のなかではベストの選択ができたのではないかと思います」

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