鈴木優磨「早くアントラーズはタイトルを獲らなければ」。チームへの思いや自身のプレーが献身的になった理由も明かした (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

上田綺世にチャンスを作りたい

 今シーズン、ベルギーのシント・トロイデンから2年半ぶりに鹿島へ戻ってきた。復帰の理由を聞くと、力強く語ってくれた。

「鹿島にタイトルをもたらしたい、という思いが大きな要因でした。鹿島はここ5年、国内タイトルから遠ざかっているので、ひとつでも多くのタイトルをクラブにもたらしたいという思いがありました。その思いは今も常にブレていません」

 勇ましい風貌とやんちゃと表現したくなるキャラクター、またFWというポジションも相まってエゴイスティックに見られがちだが、ヨーロッパから帰ってきた鈴木のプレーは、見違えるほど献身的だった。

 自分がというよりも、チームメイトの能力を引き出し、活かす。2トップを組んでいた上田綺世(現サークル・ブルッヘ)が早々にふたケタ得点をマークしたことからも周知だろう。

「シーズン序盤は綺世と2トップを組むことが多かったので、彼の得点力を活かすためには、俺自身が動いて、綺世になるべくチャンスを作りたいという考えがありました。今は(土居)聖真くんには聖真くんのよさ、エヴェ(エヴェラウド)にはエヴェの強さがあるので、そこを引き出してあげたいと思っています。

 組む相手によって自分の役割は変わってくるし、誰と組んでも合わせられる自信もある。だから、コンビを組んだ選手によって、よりストライカーの動きをするのか、よりチャンスメーカーに近いプレーをするのかは、自分のなかで使い分けています」

 プレーだけでなく、姿勢や言動からも、チームという単位が感じられる行動がいくつも見受けられる。

 たとえば、2−1で勝利したJ1第19節の柏レイソル戦だ。前述した上田がベルギーに移籍した直後の一戦とあって、勝利できるかどうかで周囲の声や評価は大きく変わってくる。

 そうしたなか1−1で迎えた82分、鈴木はPKを獲得したが、大事なキッカーをエヴェラウドに譲った。そして自身は、「信じている」と言わんばかりにゴールに背を向けたのである。試合後には、「エヴェをもう一度、復活させるのは自分のなかで大きなミッション」と語り、チームメイトへの信頼を口にした。

「会見で語ったのでクローズアップされてしまいましたけど、シーズン当初からずっと言っていたことでした。ベルギーからいつもアントラーズの試合を見ていて、エヴェのゴールは散々見ていた。あれだけ点が取れる選手なので、もう一度、自信を取り戻せば復活してくれると思っていた。

 みんなが信頼してボールを集めてくれれば(ゴールを決められるのに)というFWとしての苦しみは自分も理解できるし、(点が)取れない時の苦しみもわかる。だから、もっと信頼してボールを集めれば、彼はやってくれると思っていた」

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