鈴木優磨「早くアントラーズはタイトルを獲らなければ」。チームへの思いや自身のプレーが献身的になった理由も明かした

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

鹿島アントラーズ・鈴木優磨インタビュー(前編)

 まるで衝動に駆られるかのように、鈴木優磨はベンチに向かって走っていた。

 8月14日、J1第25節のアビスパ福岡戦だった。

 10分、ペナルティーエリア右でパスを受けた鈴木は、ゴール前に進入すると、迷うことなくシュートした。相手に当たって決まった得点は、記録上オウンゴールになったように、華麗でもなければ美しくもなかった。だが、そこで右足を振り抜いた判断は、リスタートを切った鹿島アントラーズに一体感、活気、自信......多くを取り戻させるゴールになった。

鈴木優磨はアントラーズで育った生粋の「鹿島っ子」鈴木優磨はアントラーズで育った生粋の「鹿島っ子」この記事に関連する写真を見る 8月7日にレネ・ヴァイラー監督が退任し、翌8日にコーチを務めていた岩政大樹が監督に就任して迎えた初戦だった。

 ベンチに向かって走った鈴木は、勢い余って新指揮官を押し倒すほどの熱量で抱きついた。

「特別な意味はなかったけど、『これからまたチームとして新たなスタートを切っていこうよ』というような思いからでした」

「衝動だったのか」と聞けば、鈴木は少しだけ照れくさそうに「そうですね」とうなずく。誰よりもクラブとチームを思うがゆえの、まさに衝動だったのだろう。

「自分はずっと試合に出場していた身なので、(監督が交代したことに)もちろん責任は感じていました。ただ、その事実に対して感傷に浸ることなく、反省するところは反省して、イチから頑張ろうと思って臨みました」

 2−0で終えた福岡戦で欲していたのは、間違いなく「勝利」の二文字だった。

「今シーズン当初、(岩政)大樹さんが監督代行としてチームを指揮してくれていた時のイメージが俺のなかで強烈に残っていました。それは選手として初めての感覚でもあった。その時間がすごく楽しかったので、また大樹さんのもとでサッカーができる思いと、その初戦で負けるわけにはいかないという、ふたつの思いがありました」

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