鈴木優磨「早くアントラーズはタイトルを獲らなければ」。チームへの思いや自身のプレーが献身的になった理由も明かした (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

試合中にしゃべらなくても...

 決して野心がなくなったわけではない。その単位が個よりもチームに変わっただけだ。むしろ、野心は以前よりも増している。

「結局、俺ひとりでサッカーをやっているわけではないですからね。そうした経験をチームに伝えて、それをみんなで感じ取って優勝していくことで、チームとしての経験値は上がっていくと思うんです。

 繰り返しになっちゃいますけど、サッカーはひとりではできない。だから、チームということを考えた時に、早くアントラーズはタイトルを獲らなければいけないと思っているんです」

「早く」----これも、クラブを思うがゆえの言葉だった。

「復帰した時にまず感じたのは、優勝経験のある選手が少なくなってきている、ということでした。だからこそ、早くタイトルを獲らなければとも思ったんです。

 これは自分自身が感じたことでもあるのですが、優勝を知っているのと、知らないのでは、タイトルを目指していくうえでも大きく違ってくる。チームとしてひと皮もふた皮もむけるためには、タイトルを獲得することが早いので」

 鈴木自身は2015年にナビスコカップ(現・ルヴァンカップ)、2016年にJ1と天皇杯で優勝を経験し、2018年にはクラブ初のアジアチャンピオンズリーグ優勝に貢献するとともに大会MVPに輝いている。そこで何を得ていたのか。

「大きく言うと、自信が違います。タイトルを獲ったという自信がプレーにも表れる。それを重ねることによって、この時間はこういうプレーをすれば試合に勝てる、もしくは勝ち点を拾えるということが、ひとりではなくチームとして共有できるようになっていく。

 その自信と経験は一人ひとりにも、チームにも大きく、間違いなくプレーしていくうえでの助けになる。強かった時はわざわざ試合中にしゃべらなくてもいいというのが、まさに経験の賜物だと思うんです」

 強い鹿島を知り、優勝を知るからこそ、鈴木が今、タイトルを欲している理由だった。

◆鈴木優磨@後編につづく>>鈴木優磨は日本代表に執着しない「俺みたいなサッカー選手がいてもいいと思いません?」


【profile】
鈴木優磨(すずき・ゆうま)
1996年4月26日生まれ、千葉県銚子市出身。小学1年から鹿島アントラーズのスクールに通い、ジュニアユース→ユースを経て2015年にトップチームに昇格。2018年にはクラブ初のACL優勝に貢献し、大会MVPにも選出される。同年11月、日本代表メンバーに初選出されるもケガのために辞退。2019年7月、ベルギーのシント・トロイデンに移籍を果たし、2020−2021シーズンには17ゴールを記録する。2022年、古巣の鹿島に2年半ぶりに復帰。ポジション=FW。身長182cm、体重75kg。

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