産業としての日本サッカーは想像以上の成長。日韓W杯から20年でこう変わった (3ページ目)
経営正常化には数年かかる
もちろんDAZNとの契約は、各Jクラブの収益にも好影響を与えた。クラブ別に経営情報が開示されるようになった2005年は、2カテゴリー30クラブの収益は合計で約661億円だったが、2017年には約1106億円にアップ。J1優勝クラブは3年間で22億円の賞金および分配金を手にすることになったほか、各クラブへの均等分配金も増加した。
このように、すべてが順風満帆に見えたJリーグだが、2020年、新型コロナウイルスの世界的パンデミックの影響を受けたことで、今後の事業計画に軌道修正を強いられているのが現状だ。
たとえば、2021年5月に発表された2020年度経営情報の開示では、3月決算の柏レイソル、湘南ベルマーレ、ジュビロ磐田を除く53クラブのうち、34クラブが単年度で赤字を計上。10クラブが債務超過に陥った。翌年同時期の開示では単年度赤字のクラブが20クラブに減少したが、債務超過のクラブはやはり10クラブ。営業収益はコロナ前の規模に戻りつつあるものの、各クラブの経営状態が完全に正常化するまでには、数年を要することが確実と見られている。
こうなると、2016年から2019年にかけてJ1で23%、J2で16%、J3で8%と、上昇傾向にあった選手の平均年俸も、今後は下降に転じることは避けられそうにない。
これはすべてのエンタメ業界に言えることだが、この2年間で人々の生活習慣が大きく変わってしまったため、コロナ禍前のスタジアムの風景を取り戻すことは、そう簡単な話ではないだろう。
そもそも、現在の日本社会には、人口減、30年以上も続く経済不況、あるいは趣味の多様化傾向など、サッカー界だけでは解決できない難題も多い。そんななか、サッカー人気を回復させ、各クラブのサポーター、ファンを増やしていくための特効薬はなく、この20年間に取り組んできた以上に地道な作業を続けながら、課題をひとつひとつクリアするしか方法はないのかもしれない。
かつては「10年ひと昔」と言ったものだが、日進月歩でテクノロジーが進化する現代社会においては、2~3年あれば世の中は大きく変わるだろう。2002年W杯以降の20年間は、かつてとは比べものにならないほどの速さで、世の中が変化している。
Jリーグを含め、日本サッカー界はその変化のスピードについていけるのか。それも、今後の成長を目指すうえでは重要なポイントになりそうだ。
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