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森保ジャパンのコーチが唸ったオシムのマネジメント「すごく選手思い」 (5ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 思い出すのは2005年11月、初タイトルが懸かったナビスコカップ決勝である。

 その前日、紅白戦を行なったときのことだ。人数合わせでBチームに加わった松本の何げないプレーが、思わぬ事件を引き起こす。

「たしか坂本(將貴)だったと思うんですけど、彼が横パスを出した。誰でも取れるくらい弱いパスだったので、僕がインターセプトしたんです。その瞬間、監督が『もう終わりだ!』と激怒して、前日練習が10分くらいで終わってしまった。マズいことしちゃったなと。これで優勝できなかったら、どうしようって」

 だが、このまま終わらないのが、オシムのすごさだろう。その夜に行なわれたナビスコカップ決勝の前夜祭でのことだ。オシムは関係者、メディアを前にした会見で、「ジェフはよく走ると言われますけど、うちの選手たちはしっかりサッカーをやっていますよ」と、選手たちへの信頼を口にしたのだ。

 そのスピーチを聞いた坂本は「優勝したい、監督を胴上げしたいっていう気持ちが強くなった」と振り返っている。まさに、松本の言うアメとムチの効果だった。

「私は前夜祭には出席していないんですけど、チーム関係者から『雰囲気はすごくよかった』と聞いたので、ちょっと安心しました。2003年にステージ優勝のチャンスを逃しているので、オシムさんが気を引き締めさせたんじゃないかと思います」

 オシムは何も、他人だけに厳しかったわけではない。アウェーから夜遅くに帰ってきて、翌朝にはレギュラー組のリカバリートレーニングに顔を出して選手たちに声をかけ、すぐさまサブ組が出場するサテライトリーグの視察に向かう、ということもざらだった。

「すごく労力がいること。本当に大変だったと思います。試合のメンバーを決める時には、コーチの小倉(勉)さんや江尻(篤彦)さんにも意見を求めるんですけど、コーチ陣が、この選手がいい、あの選手がいい、って簡単に言うと、オシムさんは『選手たちの背景もしっかり考えろ』と。『いろいろなことを考えたら、俺は朝まで眠れなかった。簡単に考えるな』ともよく言っていましたね。すごく選手思いなんですよね」

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