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森保ジャパンのコーチが唸ったオシムのマネジメント「すごく選手思い」 (4ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 だが、こうしたハードトレーニングの成果が、目に見える結果として表われてくる。

「強度の高い練習が毎日続いて、常に気が抜けないから、選手たちも懸命にやる。監督もしっかり見ているから、選手たちはアピールしようと頑張る。それを続けていくと、どんどんうまくなるし、目に見えない絆も生まれ、選手たちの文句もネガティブな感じではなく、『かかってこいよ』とか、『やり遂げてやる』とか、ポジティブな感じになるんです」

 ハードな練習を積み、体のケアを入念にするようになり、選手たちは明らかに逞しくなっていく。それまで負傷続きで"ガラスの足"と揶揄されることもあった阿部は、オシムの指導を受けるようになってから、負傷がめっきりなくなったのだ。

「阿部ちゃんは、練習後のケアがよくなったように感じました。練習前にしっかり準備し、練習が終わったあともしっかりケアする。それこそ監督の言う、24時間サッカーに注ぎ込むスタイルが出来上がったんだと思います」

 松本には、今になって想像することがある。オシムはJリーグだけでなく、もっと先を見据えていたのではないか、と。

「ヨーロッパでは強豪クラブになると、チャンピオンズリーグが火曜や水曜にありますよね。国内リーグとチャンピオンズリーグを合わせると、年間50〜60試合になって、オフが取れないこともある。オシムさんも休みを与えず、水曜日に練習試合を入れて、週2回試合をやっていた。『お前たち、目標はあそこだぞ』と思っていたんじゃないかなと。オシムさんは、『このクラブを変えたい』と常日頃から言っていました。高い目標を持った野心的な集団にしたかったのかもしれません」

 プロクラブのフィジカルコーチとして働くようになって2年目、29歳だった松本にとって、酸いも甘いも噛み分けた知将から学ぶものは多かった。なかでも唸らされたのは、選手のマネジメントである。

 ピッチでは怒鳴り散らしているが、トレーニング終了後、着替えて少し落ち着くと、選手に優しく声をかけたり、いいプレーをした選手にフラットな口調で「今のプレーはよかったぞ」とさりげなく褒めて、プライドをくすぐったりする。そのタイミングが絶妙なのだ。

「選手のことを本当によく見ているし、アメとムチの使い分けがすごくうまいんですよね」

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