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中村憲剛に最敬礼。17年前と重なる姿に、
新・鉄人伝説の始まりを見た (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そんな鉄人が、選手生命の危機に立たされるほどの大ケガを負ったのは、プロ生活17年目の昨年11月、J1第30節の広島戦でのことである。

 クラブの発表によれば、前十字靭帯と外側半月板を損傷した中村の左ヒザは、「全治7カ月を要する見込み」とのことだった。

 今までに経験したことのないケガの重さ、そして、リハビリ期間がコロナ禍に巻き込まれたことなどを考えると、先を見通せない復帰までの苦しみたるや、想像するにあまりある。

「みんな待ち望んでくれていたと思うが、誰よりも自分が待ち望んでいた瞬間だった」

 復帰戦を終え、中村が口にした言葉には納得するしかない。

「今日一日をケガなく終われることだけを、昨日からずっと考えていた」

 それが偽らざる本音だっただろう。

 J1第13節、清水エスパルス戦。川崎は3点のリードを奪った後半32分、中村をおよそ10カ月ぶりのピッチへと送り出した。

 試合会場の等々力陸上競技場は、観客が上限5000人までに制限されていたにもかかわらず、一段と大きな拍手が起きていた。ベンチ前では、交代で退いたFWレアンドロ・ダミアンが両手を何度も振り上げ、観客を煽っていた。

 その瞬間、中村の体中に満ち溢れているであろう喜びを思うと、ピッチに走り出す姿が17年前と重なった。

 とはいえ、一度ピッチに立ってしまえば、それが久しぶりの試合であろうとも、ガムシャラに走り回るしかなかったルーキーとは格が違った。

 交代出場直後のファーストタッチで強烈なシュートを放つと、その直後にもMF大島僚太からのパスを受け、再びシュート。いずれもゴールにはならなかったものの、立て続けに打ち込んだシュートからは、すんなり試合に入れている様子がうかがえた。

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