2020.09.01

清武弘嗣が輝きを取り戻した。
スペイン人指揮官が絶賛した能力とは

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • ヤナガワゴー!●撮影 photo by Yanagawa Go

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 8月30日、ニッパツ三ツ沢球技場。清武弘嗣(30歳、セレッソ大阪)の非凡なプレーに、スタンドからいっせいにため息が洩れた。

 横浜FC戦、自陣ゴール前で瀬古歩夢がヘディングでクリアしたボールを受けた清武は、完璧にコントロールし、一瞬で視界を広げている。そして40?級のロングパスを最前線の高木俊幸へ。わずかに合わなかったが、放たれたボールの軌道は美しく、技術とビジョンと胆力を感じさせた。

 その直後、前線から味方がプレスではめ込み、こぼれたボールを清武は自分のものにしている。その時点で、ディフェンスは整っているように見えたが、彼は3次元でのアイデアを解き放つ。浮き球を使い、軽々とラインを突破。右サイドでボールを受けた坂元達裕のクロスはGKに収まったが、出色のプレーだった。

 どちらも、前半14分のゴールのプロローグだったのかもしれない。

横浜FC戦で先制ゴールを挙げた清武弘嗣(セレッソ大阪) 敵陣でボールを奪い取った後、奥埜博亮から高木に縦パスが入る。清武は感覚的にそのタイミングを見逃さない。ゴール正面、高木からフリックパスを受けると、立ちふさがったディフェンダーをキックフェイントで滑らせ、かわす。そこからもう一度シュートコースを作って、左足で逆サイドへ定規で線を引くようなグラウンダーで流し込んだ。

 ひとりのサッカー選手として、格が違っていた。

「キヨ(清武)は、セビージャ時代に指導した。サッカーを知っている、万能な選手だよ」

 昨シーズン、ヴィッセル神戸を率いていたフアン・マヌエル・リージョは、清武について、そう絶賛していた。セビージャ時代、リージョはヘッドコーチとして清武と半年を過ごしている。

「キヨはスキルの高い選手だが、戦うことも知っていた。日本人選手は足を入れてボールを絡めとるプレーだったり、ボールを運んで相手を動かし、スペースを作るプレーだったりが、あまり得意ではない。でも、彼は球際が強かったし、賢いプレーもできる。ポジションにとらわれず、どのゾーンでも彼のタイミングでプレーできる。味方を生かしながら、チーム全体のレベルを引き上げられる選手だ」