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中村憲剛に最敬礼。17年前と重なる姿に、
新・鉄人伝説の始まりを見た (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 以来、今年10月で40歳になる中村は、大きなケガなく、また、大きく調子を落とすこともなく、ピッチに立ち続けてきた。積み上げてきた試合数は、J1、J2通算で500試合超。"鉄人"たる証である。

 率直に言えば、華奢な体つきに加え、やや猫背で走る姿は、どことなく頼りなげではある。それはルーキーのころから変わらない。

 しかし、ひとたびピッチに立てば、燃え上がる闘志とともにボールの奪い合いに挑んでいく。激しいタックルを受けることも多いだけに、試合を見ていると、ヒヤッとするシーンに出くわすことが少なくない。苦痛に顔を歪め、ピッチに倒れる中村を、何度目にしたことだろう。

 ところが、中村はそのたびに立ち上がり、ほどなく戦列に戻った。高いところから落ちてもケガをしない猫ではないが、あの猫背には本能的に体の力を緩めたり、体の向きを変えたりしてケガを防ぐ感覚が備わっているのかもしれない。不思議と大きなケガは少なかった。

 もちろん、まったくケガをしなかったわけではない。例えば、2010年2月のことだ。

 中村が、同じメーカーの黒いスパイクをずっと履き続けているのは有名な話だが、この頃、少しの間だけ白いスパイクを履いていたことがある。

 それは、彼が愛用するスパイクの誕生何周年かの記念モデルであり、色の違い以外、とりわけ何が変わったわけではない。当時の中村曰く、「ボールを蹴ったときの感覚がちょっと違ったので、『革が少し厚いんじゃない?』と聞いたら、本当に何ミリか厚くて、メーカーの人が驚いていた」という程度だ。

 ところが、運悪くタイミングを同じくして、AFCチャンピオンズリーグの試合中にアゴを骨折してしまったのである。

「やっぱり、(派手な)白なんか履いちゃダメだね」

 復帰後、中村はそう言って笑っていたが、それが冗談になるほど、彼にとってケガは珍しいことだったのだ。

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