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「イニエスタも負けたら怒る」。
神戸指揮官が見せたリアリストの一面 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Matsuoka Kenzaburo/AFLO

 今シーズン、神戸はアメリカ遠征で便宜上、3-4-3からスタートした。その後は4-3-3、4-2-3-1と試し、現状は4-2-1-3、あるいは2-4-1-3のような形が標準になりつつある。しかしフォーメーションは、あくまでスタートポジションに過ぎない。イニエスタが扇の要のように前後左右の選手と連係しつつ、ダビド・ビジャは前線を行きかう。変幻自在が特徴と言えるだろう。

 リージョは、ポジションという枠に選手をはめない。

 たとえば、サイドバックはサイドハーフのような位置を取って、プレーメイクにも参加する。コンビネーションを使って幅を取り、スペースを作り、崩しにかかる。そのため、左SBの初瀬亮からに右SBの西大伍へのパス、というのも禁じ手ではない。そうやって高い位置に人を集めることで数的優位を発生させ、たとえボールを奪われてもすぐに囲い込んで奪い返し、強烈なショートカウンターを食らわせるのだ。

 開幕戦のセレッソ大阪戦は、敗れたものの、62%のボール支配率を誇り、15本のシュートを浴びせた。第2節のサガン鳥栖戦は1-0で勝利し、65%の支配率で、16本のシュートを放った。仙台戦も6割以上は支配し、17本のシュートを見舞っている。

「ボールありき」のコンセプトに、選手が居心地のよさを感じているのだろう。そこにはたしかな成長が見られる。それこそ、監督としてのメリットと言える。

「日本人選手の底上げを考えるべきだろう。私はその可能性を、日本人よりも信じている」

 リージョはそう言って胸を張る。

「鳥栖戦だけでなく、セレッソ戦もタマ(三田啓貴)はよかった。高いスキルを持った選手で、主力になっていかなければならない。(古橋)亨梧も能力は高い。俊敏な選手だ。これからゴールも取れるはずだ」

 1年後、三田、古橋などが日本代表に呼ばれていたら――。リージョは名将として、その名をJリーグに残しているはずだ。



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