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最後までストイックな加地亮。
契約を残しながら「引退」を決断したわけ (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa
  • photo by Masashi Hara/Getty Images

「自分の思う感覚に、体がついていかない」

 当初は、それが長く戦列を離れたことによる"試合勘のなさ"だと考えていたが、讃岐戦以降も3試合続けて先発出場しても、感覚のズレが戻ってくる気配すら漂ってこない。

 それでも、契約をあと1年残していたこともあってだろう。練習に熱を注ぐことで、浮かんでくる『引退』の二文字に蓋をしようと考えたが、その感覚は時間の経過とともに大きく膨らんでいく。

 その事実に目を瞑(つぶ)ることができず、彼は2017シーズン限りでの現役引退を決断した。

「契約を1年残していたこともあり、また11月頭には何かを察したのか、珍しく長澤徹監督に呼び出され、『来年も一緒にがんばろうな』と言ってもらったこともあり、引退か現役続行か、何度も考えが行き来しました。でも、これまでやってきたことを、本当にもう1年やり抜けるのかと自分に問いかけたときに、『イエス』とは言えなかったというか......。

 1〜2カ月ならやれたはずだけど、サッカー選手は"1年"で考えなければいけないし、その"1年"に含まれるのは、単に練習をして、試合を戦うことだけではないですから。むしろ、それ以外のところでいろいろなことに気を使わなければいけないし、それを実行するには責任と覚悟もいる。

 特に僕の場合は、オフ・ザ・ピッチでのさまざまなケアがあってこそ、成り立っていた現役生活でしたから。『自分が思い描く』プレーのために、ピッチの内外でサッカーに注ぎ込んだ毎日を1年間続けられる自信がないのなら、引退するべきだと考えました」

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