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最後までストイックな加地亮。
契約を残しながら「引退」を決断したわけ (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa
  • photo by Masashi Hara/Getty Images

 その言葉にもあるように、加地のプロサッカー選手としてのキャリアはピッチ内外における徹底した自己管理に支えられてきた。

 練習前には誰よりも早くクラブハウスに到着し、湯船に浸かって体を温める。そのあとは、時間をかけて体の隅々まで念入りにケア。そうして準備を整えたうえで、チームの練習に臨む。そのストイックさはサッカー界でも有名で、20年の現役生活のうち8年間を過ごしたガンバ大阪では、「加地より早くクラブハウスに到着した選手はいない」という伝説が残っている。

 初めての海外移籍を実現したアメリカ・メジャーリーグサッカーのチーヴァスUSAでも、そのルーティンは変わらなかった。移籍当初、クラブハウスに湯船がないと知ると、子供用の大きめのビニールプールを持参してお湯を張り、湯船の代わりにしたこともあった。そんな加地のことを、周りの外国人選手は「アメージング」だと笑ったが、「まったく気にしていなかった」と加地は言う。

 当時、ロサンゼルスの地で彼が話していた言葉が蘇る。

「アメリカの人たちは湯船に浸かる習慣も、人前で裸になる習慣もないですから。お風呂に浸かる=プールに入る感覚なのか、僕を真似て(湯船に)入ってくる外国人選手は常にスパッツを履いていました。おかげで、僕だけがすっぽんぽん(笑)。しかも、日本では当たり前だと思っていた裸でお湯に浸かり、歯を磨く僕の姿を見て、爆笑していた選手も大勢いました。

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