検索

【日本代表】「ロングボール不要論」は本当に正しいのか (3ページ目)

  • photo by Getty Images

 たとえば、鳥栖のように、ロングスローを武器のひとつにして、豊田陽平という長身FWがゴールを決めるチームもある。監督も選手も、自分たちのチームの戦力を分かったうえで、狙いとしてそれを明確に実行している。勝つためにどうしたらいいか。相手を苦しめるためにどうしたらいいか。豊田という長身FWがいる。藤田直之のロングスローと正確なフリーキックがある。サイド攻撃もできる。ならば、それを最大限生かすのは当たり前のことだろう。

 そのスタイルに対して、鳥栖の選手達は不満も不安も迷いもないと思う。そういう意志統一ができているので、ロングボールを放り込んでいくことに抵抗感はないはずだ。だからこそ、戦術として有効に機能している。そして、それをやり続ける。ブレることなく続ける。そのことが、相手へのプレッシャーにもなる。もちろん、ロングボールを見せておいて、相手の気持ちをそこに集中させたところでパスをつないで、中央から崩すことも鳥栖は狙う。つないで崩す方法も持っているから、ロングボールをさらに活かせる。

 つまり、自分たちの戦力と特長を理解したうえでロングボール戦術を有効に活用して戦い、それを監督や選手、サポーターが、ひとつの戦い方としてちゃんと信じている。そして、一番重要なことは、選手が楽しくプレイできているかどうかがだと私は思っている。さらには、見ているサポーターが、楽しいかどうか。

 選手やサポーターが「このサッカーはつまらない」と思っていたら、続けていくことは難しいだろう。どんなスタイルでも、「俺たちのチームはこれでやろう。これで結果を残してタイトルを目指そう」と、そういう風にチームがひとつになれるかどうかではないだろうか。

 ロングボール戦術も含めて、自分たちが目指すサッカーと異なるスタイルを否定するのではなくて、それぞれの違いを認めたうえで、「自分たちのサッカーをつくりあげていこう」と考えることが、それぞれのクラブや代表チームのスタイル、サッカー観を育てていくのだと思う。

著者プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る