【日本代表】「ロングボール不要論」は本当に正しいのか
欧州遠征のフランス戦で起用された長身FWのハーフナー・マイク福田正博 フォーメーション進化論 vol.36
サッカーにはさまざまなスタイルがある。そうしたやり方のひとつに、前線にロングボールを放り込む戦術があり、これは、ボール保持を優先することが多い現代サッカーでは、あまり選択されないやり方になりつつある。終了間際にそれをやるチームがいくつかあるぐらいで、サッカーの潮流として、ロングボールを放り込んで、肉弾戦、空中戦で勝負、というチームは減る傾向にある。
だが、「最後のパワープレイ」という言い方があるように、リードされている状況で、身長の高い選手を2、3人ターゲットとして前線に置いてロングボールを放り込み、勝負をかけるチームがまだあることも事実。それはロングボールがひとつの有効な攻撃の手段であることを示してもいる。
私自身は、ロングボールは決して悪いことではないと思う。「ショートパスをつなぐほうが絶対にいい」という人もいるかもしれないが、それは、「いい、悪い」ではなく、サッカーに対する考え方の違いで、私としては、ロングボールもひとつの選択肢としてあっていいと考えている。
この「ロングボール放り込み」のデメリットとしては、マイボールをイーブンの、つまりフィフティ・フィフティのボールにしてしまうことが挙げられる。つまり、自分たちが保持していたボールを放棄する確率が高くなる。それよりも、自分たちのボールを大切につないでいったほうがいい、フィフティのボールを放り込むのはもったいない、という考え方であれば、つないでいくパスサッカーを志向することになる。
反対にロングボールのメリットは、時間と手間をかけずにゴール前にボールを運ぶことができる点だろう。試合の残り時間が少ないとき、ゴール前にボールを運べる回数が5、6回ではなく、10回、15回になった方が、ゴールの確率は高くなるという考えもある。
実際、サッカーでは終了間際にパワープレイで追いつくことが多々ある。守る側としては、ゴールエリア内に人数が増えることで、ボールウォッチャーになってしまったり、混乱をきたしがちになり、こぼれ球に反応できないことがあるからだ。
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著者プロフィール
福田正博 (ふくだ・まさひろ)
1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。