サッカー日本代表のアウェー戦はなぜクリケット場で開催? オーストラリアのスポーツとスタジアムの歴史 (2ページ目)
【クリケットとオージーボール】
クリケットというのは英国発祥で、ボウラーが投げたボールをバッターが打つという野球に似たスポーツ。長径が140メートルほどの楕円形の芝生のフィールドの上で行なわれる(だから、クリケット場は「オーヴァル」と呼ばれる)。
クリケットは英連邦諸国で盛んで、とくにインドやパキスタンでの人気はすさまじい。日本ではまだまだマイナーだが、2028年ロサンゼルス五輪で正式種目となるので注目を集めることだろう。
ところで、イングランドでフットボール・アソシエーション(FA)が結成され、統一ルール(サッカー・ルール)が作られたのが1863年。ラグビーの統括団体ラグビー・フットボール・ユニオン(RFU)の結成は1871年だった。だが、クリケットはそれよりずっと早く、18世紀後半には統一ルールが作られ、各地にクリケット場も整備されていた。
先日、鎌田大地所属するクリスタル・パレスがFAカップに優勝したが、同カップの第1回大会は1871-72シーズンに開催され、ワンダラーズが優勝した。その決勝戦はロンドンのケニントン・オーヴァル、つまりクリケット場で行なわれた。そして、その後もサッカーのビッグゲームにはクリケット場が使われていた。
その後、イングランドでは20世紀に入るとフットボール人気が急上昇して、クリケット場より大きなサッカー場が整備されていくが、オーストラリアでは今でもフットボール・グラウンドよりもクリケット場のほうが大きい。クリケット場は人気競技のオーストラリアン・フットボール・グラウンドにも使われるからだ。
オーストラリアのフットボール事情はかなり複雑で、4種類のフットボールが存在する。
まずサッカー、そしてラグビーだが、オーストラリアでは日本で行なわれている15人制のユニオン・ラグビーと13人制の(よりスピーディーな)リーグ・ラグビーが人気を分け合っている。それに、この国独特のオーストラリアン・フットボール(別名「オージーボール」)が存在する。
オージーボールは18人ずつの2チームが楕円形のボールを相手ゴールに入れて勝利を目指す競技で、防具をつけずにボールを奪い合うために空中戦で激突する勇壮な競技だ。
かつてはメルボルンがあるビクトリア州だけで行なわれており、最高峰リーグは「ビクトリア・フットボール・リーグ(VFL)」だったが、今では全国で人気が高まり、「オーストラリア・フットボール・リーグ(AFL)」と呼ばれるようになっている。
そして、オージーボールではクリケットと同じ楕円形のフィールドが使われる。まだ立見席があった1970年のグランド・ファイナルでは、オーストラリア最大のMCGに12万人を超える観客が集まった記録がある。
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