巻誠一郎が見たドイツW杯の舞台裏「最初に感じたギクシャクした空気は初戦の負けで一気に表面化した」 (4ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

「おまえ、今日先発だけど、いけるか?」

 巻は大きくうなずき、すぐに部屋に戻った。

「うれしかったですね。1戦目、2戦目は外からしか試合を見られなかったですし、ウォーミングアップもほとんどせずに終わっていた。(交代で)呼ばれる雰囲気もまったくなかったんです。

 ブラジル戦も前日までは、全然(試合に)出られそうな雰囲気がなかった。ただ、出たら『何か力になれるだろうな』って思いつつ、自分が入った時のイメージをしながら準備だけはしていました。

 そうしたら、ようやく試合に出られるチャンスがきた。しかも、ブラジルと戦える。めちゃくちゃテンションが上がりました」

 ミーティングでスタメンが発表されると重たい空気が流れた。2トップを入れ替えたジーコだが、はたしてブラジル相手にどこまで通用するのか。

 巻は、所属のジェフユナイテッド千葉で試合に出るときと変わらず、「攻守に全力でプレーする」ことを誓ってピッチに飛び出していった。

(文中敬称略/つづく)

巻誠一郎(まき・せいいちろう)
1980年8月7日生まれ。熊本県出身。大津高、駒澤大を経て、2003年にジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド千葉)入り。イビチャ・オシム監督のもと、着実に力をつけてプロ3年目にはレギュラーの座をつかむ。そして2006年、ドイツW杯の日本代表メンバーに選出される。その後、ロシアのアムカル・ペルミをはじめ、東京ヴェルディ、地元のロアッソ熊本でプレー。2018年に現役を引退した。現在はNPO法人『ユアアクション』の理事長として、復興支援活動に奔走している。

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