パリオリンピック男子サッカー「日本だけオーバーエイジなし」問題をこのままスルーしていいのか (2ページ目)
【交渉能力の欠如は明らか】
それだけにその数日後、FIFAから発表された各国のメンバーリストを見て仰天した。オーバーエイジが含まれていなかったのは出場16カ国中、日本だけだったからだ。
日本だけ蚊帳の外。これは事件である。明るいニュースだと言って喜ぼうとした山本氏は、単に交渉能力のない能天気な人に見えた。ところが筆者の知る限り、それは大きなニュースにはならなかった。
パリオリンピック準々決勝でスペインに敗れた日本の選手たち photo by JMPAこの記事に関連する写真を見る 大岩監督は会見の席上で「初の決勝進出を果たし、金メダルを持ち帰りたい」と言った。現実的な目標はベスト4程度と思っていた筆者との間に多少、差はあったが、オーバーエイジを使えないのが日本だけとなると、話はまったく変わってくる。ベスト8がいい線になる。実際、大会前にブックメーカー各社が発表した優勝予想では日本は7番手から9番手に位置していた。大岩監督も他国の選手リストを見た瞬間、さすがに金メダルは難しいと思ったに違いない。
客観的に見てメダルは難しいと言わざる得なくなったにもかかわらず、そのことが話題にならない。いったいどういうことなのか。五輪は、言ってみればニュースの宝庫だ。サッカー以外にも引きのあるニュースは山ほどある。景気の悪い話はページビューが上がらないと考えれば、報道を控えたくもなるだろう。
日本が準々決勝で対戦したスペインにもオーバーエイジは3人いた。ユーロ2024の優勝メンバーはふたりいた。日本よりはるかに充実したメンバーを送り込んできた。格上相手にU-23で乗り込む日本の姿はさながら丸腰で、0-3の敗戦は、内容的には惜しかったとはいえ、結果的には至極、順当だった。
日本は本当に全力を尽くして負けたのか。肝心な点に、思いきり疑念が生じているのである。しかし、繰り返すが、その点に触れようとするメディアは少ない。五輪は大会後も話題豊富で、サッカーのオーバーエイジ問題などより受けのいい話、喜ばしい話がネット上を賑わせている。
そうこうしているうちに、W杯アジア最終予選を戦うメンバーの発表だ。山本氏はこの会見でも森保一監督の傍らに座るだろう。だが、先に進む前に五輪の話をする必要がある。このままでは、選手のレベルは世界に追いついたが、サッカー協会の交渉能力はそのレベルに追いつけずにいると言われても仕方がない。説明は不可欠になる。
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