元U-20代表監督が将来性を見抜いた、小学校6年生の藤田譲瑠チマ「セレクションでそんなことをする子は初めて」 (3ページ目)
【セレクションで「即合格」を決めた選手】
── これまで関わりのあった選手のなかで、特に成長を感じた選手はいますか?
「直接招集したことのない選手はほとんどおらず、関根大輝や内野貴史くらいですね。最初のカナリア遠征に参加した選手のなかで五輪メンバーに入ったのは、山本理仁と西尾隆矢くらいかな。ジョエル(藤田譲瑠チマ)も影山さん(雅永/元U-18代表監督)の下でコーチをしていた頃は、まだひとつ下のU-17に招集されていました。2021年から彼を呼ぶ計画でしたが、残念ながら大会がなくなってしまいましたので」
── 藤田選手の成長度合いはいかがですか?
「彼とは小学校6年生の時に初めて出会いました。ヴェルディのジュニアユースのセレクションに来た時ですね。
ヴェルディのセレクションではゲーム形式の7対7を行なっていたのですが、僕がたまたま見ていると、ジョエルはまだ子どもの声ながら『お前はどこのポジション?』と、その日に初めて会ったチームメイトに話しかけて仕切り出したんですよ。
セレクションでそんなことをする子は初めてで、その時点で上手かどうかに関係なく『合格だな』と思いました。U-17代表に呼ばれた時も、森山(佳郎)監督が同じようなことを言っていました。今も変わらず、そのままですね」
── 大岩剛監督と話すこともありますか?
「はい、ありますよ。このチームの原型となるU-22は最初に私が担当していたので、選手の成長についてはかなり話し合ってきました。だから、スペインに負けたあとの大岩監督の涙には、グッとくるものがありましたね」
── 今後、この世代の選手たちに期待することはありますか?
「オリンピックでのベスト8は達成しましたが、私たち日本サッカーの関係者にとって『世界一』という目標は変わりません。日本には、そのチャンスがあると信じています。
今回は負けてしまいましたが、そのチャンスを持っていたからこそ、余計に悔しいです。実際、今回も世界一になる可能性はあったと思います。ただ、結果として達成できなかったので、また世界一を目指していくことが大切だと思います」
<了>
【profile】
冨樫剛一(とがし・こういち)
1971年7月15日生まれ、神奈川県出身。読売サッカークラブ育ちで、ヴェルディ川崎→横浜フリューゲルス→コンサドーレ札幌でプレーしたのち1997年に現役引退。翌年からコーチとしてV川崎(東京V)や札幌で指導者の道をスタートし、2014年には東京V監督を務める。2019年からU-18(U-19)代表コーチ、U-22代表監督、U-20代表監督などを歴任する。2024年より横浜F・マリノスユースの監督となる。ポジション=DF。
著者プロフィール
了戒美子 (りょうかい・よしこ)
1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。
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