日本代表招集メンバーからすけて見える森保監督の胸中 過去の成功体験にすがるしかないのか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【問題はボールの奪われ方】

 森保監督は最近、長友の守りの堅さについて「まだまだ若い人はかなわない」と讃えていた。「我々が目指す、"いい守りから攻撃へ"というサッカーに照らしても外せない選手であることをFC東京のプレーでも示している」とは、今回のメンバー発表で森保監督が口にした選考理由である。

 森保監督はサッカーの戦い方について言質を取られるのを怖がっているのか、抽象的な表現を繰り返してきた。そうした中にあって最近、口にする頻度が高まっているのが「いい守りから攻撃へ」だ。1回の会見につき1度は口にする。

 サッカーは連続動作だ。ボールを奪った瞬間、ただちに攻撃を開始する。奪い方は重要なテーマになる。それについては同意する。しかし、サッカーは得点を奪うか、ラインを割らない限り、奪われた瞬間、相手の攻撃が始まる。

 奪われ方も、奪い方と同じだけ重要なテーマになる。いい攻撃からいい守備へ。マンチェスター・シティのベンチで、ジュゼッペ・グアルディオラの参謀役として再度その傍らに座っているフアン・マヌエル・リージョ(元ヴィッセル神戸監督)は、筆者の問いにこう答えたものだ。

「奪うことを想定しながら守ることも重要だが、奪われることを想定しながら攻撃をすることも重要」だと。それをこう言い換えた。「守りながら攻める。攻めながら守る」。

 森保監督が強調するのは、守りながら攻める、だ。奪うことを想定しながら守る、である。だがその対となるプレーについては言及がない。90パーセント以上の攻撃は失敗に終わる。その失敗の仕方、どこでどう奪われるべきかにどれほどこだわれるかも、それと同じぐらい不可欠になる。

 アジアカップの不成績はそのアンバランスに原因があった。いい守備からいい攻撃はできていたにもかかわらずベスト8に沈んだ。森保監督はどうやら真の敗因を掴めていない様子である。

 この会見で森保監督が口にしたアジアカップの反省点は以下のふたつだった。「セットプレーからの失点」と「ロングボールの対応」である。攻撃面における課題は出なかった。

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