「日本に勝つこともできる」トルシエがベトナムで描くパリ五輪出場や2026年W杯出場への野望 (3ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by REUTERS/AFLO

 そのためには、シーゲームズも大きな意味を持つ。東南アジア地域の大会だが、選手が経験を積むうえでは重要だ。同時にレベルを維持するための大会でもある。

 ベトナムにとってトップ4に入るのは、協会やサポーターを納得させるための義務であり、トロフィー獲得が義務づけられている。同時に、U-23代表にとってはU-23アジアカップに向けてのステップであるとともに、W杯に向けてのステップでもある」

――そうなると、9月のアジア大会も重要な大会になりますね。

「どういう体制で臨むかまだ確定はしていないが、ベトナムにとってはU-23代表のための大会になるだろう。ただ、我々は同時にW杯への準備も進めている。

 今年11月にはW杯予選も始まる。つまり、A代表の準備も同時に進める必要がある。9月にも興味深い試合を組んでいるが、10月もA代表のために優れた対戦相手を見つけたい。

 そういう意味では、9月、10月はベトナムにとってとても大変な(負荷のかかる)時期だ。U-23代表にとっては本大会への出場権獲得へ、A代表にとってはW杯予選の前段階として、大事な時期となる」

――ベトナムでは、あなたと代表への期待がとても高まっていると思います。すでにベトナムは、それなりの結果を出していますからね。A代表は昨年のW杯アジア最終予選で日本と引き分けましたし、U-23代表は2018年U-23アジアカップで決勝まで駒を進めています。

「そのとおり。(ベトナムサッカーの)潜在能力には疑いの余地がない。今は、それをどれだけ恒常的に発揮させることができるかだ。

 日本がW杯でドイツやスペインを破ったように、ひと試合ならばすべてが可能だ。サウジアラビアがアルゼンチンを破ったように、またチュニジアがフランスを破ったように、ベトナムが日本に勝つこともできる。どんなサプライズも起こりうる。

 だが重要なのは、安定したパフォーマンスを発揮するための武器を与えることだ。そしてそのパフォーマンスは"自分たちにはできる"という確信から生まれる。自分たちにはその武器があると信じることから生まれる。

 U-20代表がそうで、彼らはオーストラリアとカタールを破った。どちらも2カ月前のW杯本大会の出場国だ。そうしたことがベトナムの選手たちに自信を与える。

 世界レベルの国と比較した時に、この自信のあるなしはとても重要だ。だからこそ、自信を与え続けなければならないし、武器を与え続けなければならない」

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