「日本に勝つこともできる」トルシエがベトナムで描くパリ五輪出場や2026年W杯出場への野望 (2ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by REUTERS/AFLO

――この20数年の間にサッカーは進化しましたが、指揮官としてすべきことも変わってきているのでしょうか。

「私の仕事は、選手を個人として進化させることではない。それはクラブの仕事だ。選手の選考自体が(自らの)仕事であり、(自らがすべきことは)すでに私の要求に応え得る能力を持った選手を選ぶことだ。そこは変わらない。

 求めるのは、プレーを理解できる選手だ。知性があり、正しい決断ができる選手であり、完璧な動作を実現できる選手だ。

 ディテールとは、体を正しいポジションに置くことであり、適切な瞬間に適切なパスを繰り出すことだ。さらには、忍耐強くあること――必要とあれば、躊躇なくボールをピッチの外に蹴り出すことだ。

 何が何でも突破を試みるのは、賢明とは言えない。ゴール前で無理やりシュートを打つのも同じだ。シュートを打つには、適切なポジショニングとボールコントロールが不可欠だ。

 また、別のディテールは、チームがうまくいっていない時に、ハーフタイムで大きな変更を加えることだ。やり方を変えることを躊躇ってはならない。

 今日ではほぼすべての監督が、仕事の仕方をわかっている。チームをどう準備し、どうプレーをさせるかを。違いは小さなディテールから生じる。そのディテールに気づく監督と、気づかない監督がいる。

 私のこれまでの経験――多くの国際試合をこなし、9つの異なる協会のもとで仕事をした経験が、若い監督たちに比べ、迅速な決断を下せることを可能にしている。それが私のアドバンテージで、チームを勝利に導く方法でもある」

――カタール国際、シーゲームズと大会が続きますが、その後のプログラムはどうなっていますか。

「最初の目標は、W杯に向けてのダイナミズムを作り出すことだ。2026年W杯出場が最終的な目標で、目指すべき山の頂でもある。そこに至るまでにはいくつかの重要な段階がある。

 最初の段階は、U-23代表がアジア大会(2023年9月/中国・杭州)ですばらしいパフォーマンスを実現することだ。そして、A代表もアジアカップ(カタール)でできるだけ先に進む。日本のように、ベトナムもW杯本大会に進めないと誰が言えるのか?

 次に、U-23代表の最大目標がある。来年1月(あるいは今年12月)にカタールで予定されているU-23アジアカップ本大会(兼パリ五輪予選)に進むことだ。アジアの最高峰のチームが集まる大会に、ベトナムも参加する。たとえ難しいにせよ、パリ五輪出場も不可能とは言いきれない。

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