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トルシエが語る、カタールW杯の5人交代制とVARの導入。「サッカーを変えた。そしてサッカー大国と小国との差を縮めた」 (2ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by Kyodo News

 開催時期が秋・冬に変わっただけでなく、ドーハを中心とした一都市集中開催であったことでも、カタールW杯はこれまでの大会とは異なっていた。

「すべてのスタジアムが50㎞の範囲内にあるコンパクトな大会で、まるで"ひとつの村"のような雰囲気を作り出した。ひとつの大きなサッカー村であり、サッカーミクロコスモスと言えるものだった。

 スタジアム間の移動が容易で、せいぜい1~2時間しかかからなかった。サポーターもグループリーグの3試合を容易に見ることができたし、メディアも取材がとてもやりやすかった」

 宿泊施設のクオリティには問題があったものの、そこを除けばカタール大会はこれまでにない、すばらしい大会だった。W杯の歴史上最高と評価するジャンニ・インファンティーノFIFA会長の意見に、トルシエは同意する。

「最も優れたコンセプトのもとに開催された大会だったと言える。最高のフォーマットのもとで、すばらしい雰囲気を作り出したカタールW杯は、これまでにない最高の大会だった」

 翻(ひるがえ)って、ピッチの上のプレーについて、トルシエはどう見たのだろうか。近年のW杯は、最先端のスタイルや戦術、傾向を世界に知らしめる舞台、という意味合いが強い。すなわち、ヨーロッパの最先端のサッカーを、全世界が共有するのがW杯である。

「サッカーがより攻撃的になった」と彼は言う。

「それぞれのチームには、自分たちのプレーを実践するための、独自のプレーの構築があった。コレクティブな要素、コレクティブな規律とオートマティズムは不可欠で、個人の能力は、私が思うには二次的なものだ。

(今大会の随所で)私たちが目にしたのは、規律にあふれてはいるが、厳格すぎないチームだ。よく組織され、相手の守備組織を崩すことのできるチームだ」

 そして、ルールの変更(5人交代制)と新しいテクノロジー(VAR)がサッカーを変えたと言う。

「5人の選手交代によって、戦術的な変更が容易になった。監督の役割が変化し、監督の決断がより大きな意味を持つようになった。

 それまでの監督は、ガイド(案内人)の役割が大きく、チームを変えるために大きな変化を加えなかった。選手交代は主に疲労やケガによるもので、監督が戦術的に介入する余地は小さく、状況に従い選手を代える以外になかった。試合がうまくいかない時も、プレーを修正する選択肢は多くはなかった。

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