なでしこジャパンは「3バックでは守りきれない」不安から成長できたのか。ようやく見つけた自分たちの形「最低ライン」
昨年10月に長野で行なわれたナイジェリア、ニュージーランド戦で、国内組で3バックを導入したなでしこジャパン。そこから海外組を含むフルメンバーで11月にイングランド(●0-4)、スペイン(●0-1)と世界ランク上位国と対戦することで強化を図ってきた。しかし、成熟したヨーロッパチャンピオンのイングランドサッカーの前に、手も足も出ないまま、守備の強度、攻撃へのつなぎにおいて大きな課題を残していた。
強豪相手に最後まで諦めることなくチャレンジし続けたDF三宅史織(右) 今回のShe Believes Cup(アメリカ)は、その3バックの土台を完成させ、南米チャンピオンであるブラジル、世界ランク1位のアメリカ、東京オリンピック金メダルのカナダに対して、現実的に対抗できるオプションとなるのかを見極める3試合でもあった。
結論からいうと、相手によってはオプションとなり得るだろう。3バックにおいて日本は発展途上であることは間違いないが、最終ラインを三宅史織(INAC神戸レオネッサ)、熊谷紗希(FCバイエルン・ミュンヘン)、南萌華(ASローマ)に固定したことで、なんとかベースが構築できた。右を任された三宅は、自らのミスで失点を招いた前回のShe Believes Cupを境に代表から遠ざかり、そこから懸命に対人強化に励み、再び這い上がってきた。それだけにこの大会への想いは人一倍だった。
しかし、初戦のブラジル戦では寄せの甘さから、決勝点を許してしまう。相手は象徴的プレーヤーのマルタだっただけに、勢いに飲まれたのもあるだろう。これで消極的になるかと思いきや、続く第2戦のアメリカ戦でも怯むことなく得点源であるマロリー・スワンソンの動きをファウルぎりぎりの当たりで封じていた。そして、44分までは完璧だった。ところが、スワンソンに大きな展開でボールが入ると、三宅はほんの一瞬動きを止めてしまった。そのあと、俊足のスワンソンに突破を許し、ゴールを奪われてしまった。ここまで抑え込めていたからこその迷いに見えた。
「正直それはありました。いいタイミングで先に体を入れて、ファウルをもらう形は(これまでも)あった。ただ位置的にレッドカードもあるかと頭をよぎってしまった。身体が入れ替わる前にファウルで止めないといけなかった」と本人も悔やむ。
失点直後、GKの山下杏也加(INAC神戸レオネッサ)は三宅に声をかけている。
「(もうひとつ前で)1人プレスバックさせられていたら、もう少し何かできたかもしれない」
もちろん、三宅ができたはずということを踏まえた上での言葉だ。三宅サイドで起こったことは最終ラインのどこでも起こり得る3バックのリスクでもある。昨年のイングランド戦から貫いた三宅、熊谷、南の3枚は5連戦でさまざまな痛みを伴いながら、今大会最後のカナダ戦を無失点に終えたことで、ようやく基礎が構築できた。この5戦で守備ラインを固定したからこその収穫だ。
熊谷もアメリカ戦の失点については「リスクマネジメントはできていたし、相手が攻め残っていてのあの1本だった」としながらも「今、イングランドと戦ったらもうちょっと自分たちも修正できると思う。(自身がボランチに入ったことについては)自分がひとつ前に入ることで跳ね返せるのは大きいし、メッセージ的に"しっかりゲームを閉める"役割だと思っていますし、これもひとつのオプション」と数々の収穫も口にした。
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