なでしこジャパンは「3バックでは守りきれない」不安から成長できたのか。ようやく見つけた自分たちの形「最低ライン」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

【3得点も課題あり】

 攻撃面はどうか。ブラジル戦ではサイドから仕掛けるところまでは狙いどおりだったが、前線で枚数が足りず、植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が孤立してしまった。そこを補うべく、アメリカ戦ではボランチの1枚、ウィング、インサイドハーフと攻撃のスイッチを入れて、前線での厚みを生むことを意識した動きを加えるも、再びノーゴール。これまでにないほどのステップアップを感じているにも関わらず、ゴールが遠いこの状況に、攻撃陣のゴールへの想いは危機感とともにこれ以上ないほどに高まっていた。そして迎えたのが第3戦のカナダ戦の今大会初ゴールだった。

 最終ラインでスペースを伺い、三宅が右サイドのスペースへロングフィード。相手DFの背後で受けた小林里歌子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)がGKとの間に絶妙なパスを流すと、すでになかに走り出していた右ウィングの清家貴子(三菱重工浦和レッズレディース)が一瞬の差でゴールにボールを押し込んだ。この形は3バックの利点を最大限に活かした攻撃パターンだった。

 初スタメンを勝ち取り、昨年11月のスペイン遠征から右ウィングとしてチャンスを狙っていた清家は、「1点獲れば何かが変わると思っていて、自分がそのきっかけになってやろうと思っていました」と強気な姿勢で臨んでいた。スペイン遠征から控えチームで右ウィングをしながら「生き残るためには何か違いを見せないといけない」と考えを巡らせていた。自チームでは前線を張る清家の特長が大いに生かされた先制点だった。

 チームに自信と活気を蘇らせたゴール後、PKで加点すると池田太監督は第2戦までのスタメンをピッチに戻して、変化を待つが展開は膠着。遠藤純(エンジェル・シティFC)のゴールでなんとかスコアを動かすも崩しとフィニッシュの形には引き続き課題が残った。

 結果的に2位で大会を終えた日本だが、決して楽観はできない。パフォーマンスが上がり切っていなかったブラジルや、日本に対してさほど本気度は高くなかったアメリカは油断を感じる入り方をしていたことは否めない。カナダにおいては連戦でたまった疲労の色が濃く、終始動きが鈍かった。各国、トップパフォーマンスには程遠かったが、それでも今の日本にとってはこれ以上ない相手だった。

 今後3バック、4バックを起用に使い分けられるようになるには、年単位での強化が必要だろう。実際、アメリカ戦の最後に4バックにした際には「どこまでプレスに行くんだっけ?と距離感がズレた」と熊谷は振り返った。

 イングランド戦後には多くの選手から「3バックでは守りきれないんじゃないか」と多く上がっていた不安の声も、今は充実の表情に変わっていた。この先、3バックに主軸を置くのか池田監督の判断にも注目したい。

 ワールドカップ本戦では、世界屈指のストライカーを相手に無失点を貫くのは至難の業だ。現実的に1失点は必要悪と捉え、やはり複数得点を仕留められる攻撃力が必須だ。足を振る意識は高まった。正面からブロックされてしまうシュートタイミングへの対応と、枠内への確率を上げることはマストだろう。ここは十分、個人で取り組める範疇だ。

 最終戦後には、選手の誰もが口をそろえて、「ここが最低ライン」だと語った。なでしこジャパンはようやくこのチームならではの、"自分たちの形"を見い出した。残り5カ月でワールドカップを勝ち上がれるチームに成長できるか、4月のヨーロッパ遠征では攻撃の活性化がポイントになりそうだ。

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