トルシエが語る、カタールW杯の5人交代制とVARの導入。「サッカーを変えた。そしてサッカー大国と小国との差を縮めた」 (4ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by Kyodo News

「私が日本代表監督を務めていた当時、日本はフラットなラインでオフサイドトラップを仕掛けていた。ただ私自身が、しばしばこのシステムに懐疑的になった。たとえオフサイドトラップに成功しても、審判が逆の判定をするかもしれないからだ」

 2002年W杯のベルギー戦のゴール(マルク・ヴィルモッツが決めたベルギーの先制点や、オフサイドで取り消しになった稲本潤一の幻の決勝ゴール)も、VARがあれば別の判定になっていたかもしれないと彼は言う。

 その真偽はさておき、審判の判定が以前は、いわゆる大国に有利であったのは、エキスパートたちが肌で感じていた事実であった。

「(VAR導入は)大きな進化であり、小国がすばらしい結果を得ることを可能にした。以前は、ブラジルやアルゼンチン、フランス、ドイツ、スペインなどの大国がゴールを決めると、レフリーがそれを取り消すことはほとんどなかった。

 彼らが大国であるからで、VARの導入はレフリーの判定に大きな影響を与えた。判定がより客観的になり、多くの点が改善された。いわゆる大国も名前の力を発揮できなくなり、両者の差は縮まった」

(文中敬称略/つづく)

フィリップ・トルシエ
1955年3月21日生まれ。フランス出身。28歳で指導者に転身。フランス下部リーグのクラブなどで監督を務めたあと、アフリカ各国の代表チームで手腕を発揮。1998年フランスW杯では南アフリカ代表の監督を務める。その後、日本代表監督に就任。年代別代表チームも指揮して、U-20代表では1999年ワールドユース準優勝へ、U-23代表では2000年シドニー五輪ベスト8へと導く。その後、2002年日韓W杯では日本にW杯初勝利、初の決勝トーナメント進出という快挙をもたらした。

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