サッカー日本代表、激闘の数々の証言。ドイツ戦で選手たちは何を考えていたのか (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 0-1で迎えた後半、日本は4-2-3-1から3―4―2-1へとシフトチェンジ。

「3バックのオプションがあると、常に森保(一監督)さんは言っていた。トレーニングもしていたし、ミーティングでも話し合っていた。何の違和感もなく、選手は受け入れて実行できたと思う」(長友)

「(後半に)3バックにしてハマった。このチームは逆転勝ちがほとんどないが、0-1ならいけると思った」(吉田)

 システム変更で徐々に守備が落ち着いてきた日本は、浅野、三笘薫、堂安、南野と、攻撃的な選手を次々に投入。

「負けていたので(攻撃に)いくしかなかった。トミ(冨安健洋)が(DFに)入って3枚並べると(守備に)厚みが出る。その分、ウイングバック(の自分)が攻撃的にいけた」(三笘)

 反撃に打って出た日本は75分、三笘、南野の連係で左サイドを突破すると、最後は相手GKのマヌエル・ノイアーがはじいたボールを堂安が鋭く詰めて、同点に追いついた。

「1カ月で技術が上手くなるわけじゃないが、シュート練習する時は常に対戦相手まで細かくイメージしてやっていた。どれだけ冷静に練習のイメージで蹴れるかが大事だった」(堂安)

 だが、日本の反撃はこれだけでは終わらない。

 83分、自陣で得たFKを板倉滉が素早く前線へフィード。これを受けた浅野がDFラインの背後に抜け出すと、ノイアーの肩口を抜く決勝ゴールを叩き込む。

「こういう日を想像して、4年間準備してきた。結果が出てよかった。(シュートは)ニア上を狙ったわけじゃない。思いきり打った結果。みんなの気持ちが強い分、それがボールに乗っかった」(浅野)

「後半から入った選手がゴールに絡んで決めてくれた。相手が疲弊したところでサブが決める。チームの力だなと思う。ベンチを含めていい選手がそろっている。総力戦を見せられた」(伊東)

 伏兵・日本がワールドカップ優勝4回を誇る伝統国ドイツを、2-1の逆転で下す歴史的勝利。

「今日勝ったのはデカい。後半のような戦いなら、どんな相手でも戦える。自分もゴールに絡みたかった。次の試合は自分が決めてやろうと思う」(伊東)

 しかし、勝利の瞬間にはピッチ上では歓喜を爆発させた選手たちも、すぐに気持ちを次戦へと切り替えた。

「(ドイツに勝って)最高のはずだが、(気持ちは)落ち着いている。3回目(のワールドカップ出場)だし、やるべきことに集中している。しっかり前を見据えて、やることをやって、コスタリカ戦に備えたい」(吉田)

 その後の行方を大きく左右する、大事なグルーブリーグ初戦。日本はドイツを相手に望外の勝ち点3を手にし、これ以上ない最高のスタートを切った。

(つづく)

【著者プロフィール】浅田真樹(あさだ・まさき)
フリーライター。1967生まれ、新潟県出身。サッカーのW杯取材は1994年アメリカ大会以来、2022年カタール大会で8回目。夏季五輪取材は1996年アトランタ大会以来、2020年東京大会で7回目。その他、育成年代の大会でも、U-20W杯は9大会、U-17W杯は8大会を取材している。現在、webスポルティーバをはじめとするウェブサイトの他、スポーツ総合誌、サッカー専門誌などに寄稿している。

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【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

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