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コスタリカ戦、日本代表で唯一の希望だった三笘薫。スペイン戦のカギを握るが、その起用法は? (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

 もし、「戦術・三笘」を実現するなら、彼の攻撃力が最大限に生きる状況を作るべきだろう。その点、ウイングバックというアップダウンで攻守に働くポジションは適切ではなかった。コスタリカのように低い位置でセットして守る相手なら、ウイングとして用いるべきだったのだ。

 森保監督はドイツ戦で3バックを奥の手のように使い、偶然的に奏功したシステムで「二匹目のドジョウ」を狙ったのだろう。しかし、付け焼き刃感が強く出た。たとえば左センターバックに入った伊藤洋輝は、後ろか横へのパスばかりで、本来なら1対1で勝ちきれる三笘にもっと早くパスをつけるべきだった。ただし、ふたりが左サイドで組むのはほぼ初の実戦なのだから、連係の難を語るのは酷だろう。

「もっとボールを受けられるようにするべきでした。後悔はあります」

三笘の証言には、懊悩が滲む。

 強豪スペインが相手でも、そのドリブルは容易に止められるものではない。もしスカウティングが疎かだったら、ド肝を抜かれるだろう。チェルシーのセサル・アスピリクエタ、あるいはレアル・マドリードのダニエル・カルバハルが対面する選手になる可能性が高いが、どちらでも泡を食うはずだ。

「(決定機の)回数をどれだけ増やせるか。そして、最後のゴールの質。結びつけられなかったら、(チャンスを作っても)意味はないです」

 そう語る三笘は、スペイン戦で勝敗を左右する存在になるだろう。ドイツ戦と同じく守備に重きを置くようなら、やはり左ウイングバックがいいのかもしれない。しかし、攻撃に特化した三笘こそが「戦術」だ。

 

【著者プロフィール】小宮良之(こみや・よしゆき)
スポーツライター。1972年、横浜生まれ。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

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