日本代表のドイツ戦勝利はなぜ生まれたか。采配のスピード感と選手交代5人制の新ルールが最大限に生かされた (4ページ目)
この時も、交代のたびに変化する選手の位置を把握するのに、こちらは四苦八苦させられた。交代枠3人制で行なわれたにもかかわらず、3度の交代で8つのポジションに変化を生じさせた采配だった。イタリアはこの目くらまし戦法と言うべきマジックに大慌てした。イタリアの敗因を誤審のせいにする人もいるが、日本サッカーがなにより見習うべきは、ヒディンクの交代術だった。
今回の森保采配は、それに匹敵する采配だった。選手交代5人制のメリットを最大限利用し、無理矢理、風を吹かせることに成功した"凄み"さえ感じさせる交代だった。
それを可能にしたのが、日本の選手層の厚さだ。誰が出てもそう変わらない。悪く言えば、"どんぐりの背比べ"だが、よく言えば粒ぞろい。スターはいないが、使える選手は多くいる。実際、大迫勇也をはじめ、今回ほど落選者に同情したくなった過去はない。ベンチスタートの堂安、浅野拓磨がゴールする姿に、そんな日本の特徴は現れていた。それに森保監督はよく応えたというべきか。
当初15%と予想した日本のグループリーグ突破確率は、これで一気に45%ぐらいまでアップした。コスタリカ戦、スペイン戦と、ヒリヒリとしたギリギリの戦いは続く。カタールW杯は俄然、面白くなってきた。
【著者プロフィール】杉山茂樹(すぎやま・しげき) スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーで、W杯取材は2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)など多数。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)。
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