日本代表のドイツ戦勝利はなぜ生まれたか。采配のスピード感と選手交代5人制の新ルールが最大限に生かされた (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

3バックへの変更をどう見るか

 3バックは一方で5バックとも言われる、ともすると守備的になりかねない布陣だ。森保一監督がサンフレッチェ広島時代に採用した3バック(3-4-2-1)は、5バックになりやすい3バックだったが、最近行なわれた数試合で森保監督が見せた3バックは、守備的なものもあれば、攻撃的なものもあるといった具合で、その3バックの持つ意味がわかりにくくなっていた。

 森保監督は何がしたいのか。この場合もコンセプトは伝わってこなかった。前半4-2-3-1の1トップ下を務めたエース格の鎌田大地が、5-2-3(3-4-3)的な3バックの左ウイングの位置で構える姿を見て、ミスキャストではないかと懐疑的になったものだ。鎌田はサイドに適性がなさそうに見えるセンタープレーヤーである。スピード系の1トップ、前田大然にとっても、鎌田との距離が離れることは好ましい話ではなかった。

 後半12分、森保監督はさらに交代のカードを切った。左ウイングバック(WB)長友佑都に代え三笘薫を、1トップ前田に代え浅野拓磨をそれぞれ投入した。前田と浅野という同じキャラ同士の交代はともかく、長友と三笘の交代にもミスキャストではないかと懐疑的な目を向けたくなっていた。

 三笘の武器は前線での切れ味鋭いドリブル突破だ。ウイングハーフではなくウイングバックになりがちな、定位置の低いポジションではその魅力は活かされないと考えるのは筆者だけではないはずだ。実際、そのドリブル力が発揮されたのは1回きりだった。そしてそれが後半30分に挙げた堂安律の同点ゴールにつながったのだった。

 日本が間延びしがちな布陣を選択したこともあったのか、試合は後半の頭からオープンな展開になっていた。ドイツに3回チャンスがあれば、日本にも1回巡ってくるという調子で、前半の28対72(ボール支配率)の関係は、結果的に34対66程度に変化していた。ドイツペースではあったが、日本の攻め返す回数は前半より増えていた。

 気がつけば撃ち合う展開になっていた。パンチ力で勝るのはドイツ。シュートはバーをかすめ、ポストをも直撃した。権田のセーブも飛び出した。ヨナス・ホフマンのシュートを1本、セルジュ・ニャブリのシュートを3本防いでいる。試合のアヤとなるセーブであったことは、彼が前半、PKを与える反則を犯しながらマン・オブ・ザ・マッチを獲得したことに証明されている。

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