オシムジャパン全試合に出場した鈴木啓太。「自分の新たな扉が開いた」という代表ベストゲーム (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

 だが、黒子に徹したつもりの試合のなかにも、鈴木の印象に強く残っているプレーがある。それはある意味で、"黒子が演者となった瞬間"と言っていいのかもしれない。

「それまでの僕だったら、ああいう場面では前を向かず、安全にボールを下げるようなタイプの選手でした。でも、オシムさんはリスクを冒すこととか、チャレンジすることの必要性をずっと口にしていたので、そのなかで自分の新たな扉が開いたというか......」

 鈴木がそう振り返るのは、前半22分のプレーだ。

 坪井からの縦パスを受けた鈴木は、迷わず前を向くと、ボールを左サイドへ展開。そこから駒野友一のクロスが生まれ、三都主の2点目のゴールにつながっている。

「数日間でしたけど、オシムさんのキャンプに参加して意識が変わり、それが実際のプレーにも表れた。そのことが僕にとって自信になりましたし、この試合のなかでも、特に評価できる点だったのかなと思います」

 結果は2-0。オシム監督の下、新たなスタートを切った日本代表は、見事に初陣を勝利で飾った。

「どの試合でも勝たなければいけないのは同じだと思いますし、オリンピックチームの時でも、レッズの時でも、そう思っていました。でも、やっぱりA代表の試合っていうのは特別で、国のトップとして国を代表して戦っている。そこで負けるわけにはいかないですし、ホームだったら、なおさらですよね。そういうプレッシャーはすごくありました。

 だから、自分が先発で出て2-0で勝てたということは、うれしかったというよりも、ちょっとホッとしたっていうところがありました。『A代表の選手たちって、こういう気持ちでやっているんだ』ということを、そこで初めて知ることができたのも大きかったです」

 最終的に国際Aマッチ通算28試合に出場した鈴木にとって、記憶に残る日本代表戦は少なくない。文字どおりの"ベストゲーム"を挙げるならば、他の試合も思い当たる。

「チームとしての試合内容で言えば、スイス戦がベストゲームなのかもしれません」

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る