水を運ぶ人・鈴木啓太が語るオシムのサッカー。「自分が試合に出る、出ないとは別次元の楽しみがあった」

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by AFLO SPORT

日本代表「私のベストゲーム」(11)
鈴木啓太編(中編)

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 イビチャ・オシム新監督の就任とともにA代表デビューを果たした鈴木啓太は、以後、およそ1年7カ月に渡って日本代表の先発メンバーから外れることがなかった。

 しかし、絶対的な地位を確立しているかに見えたボランチも、「とにかく、オシムさんの練習についていくことで精いっぱいでした」。以下は、鈴木の述懐である。

「その間、少しずつメンバーの入れ替えもあったので、自分が意識していたのは、とにかく(メンバーに)選ばれ続けて試合に出ることだけ。1試合終わると、『また今回もメンバーに選ばれて、試合に出られてよかった』っていうのが、結構長い間続きました」

 実際、オシム監督からは大きな雷も落とされたこともあった。トリニダード・トバゴ戦から数えて3試合目、アジアカップ予選のイエメン戦のことだ。

「『(パスの回し方が)各駅停車みたいなサッカーをするんじゃない!』っていうことを言われて、『やっぱり、これじゃあダメなんだ』と気づかされました。そこから"本当のオシムさんのサッカー"を学んでいった気がします」

「オシムさんのもとでサッカーをするのは、めちゃくちゃ楽しかった」という鈴木啓太「オシムさんのもとでサッカーをするのは、めちゃくちゃ楽しかった」という鈴木啓太この記事に関連する写真を見る だがその一方で、鈴木は「オシムさんの下でサッカーをするのは、めちゃくちゃ楽しかった」とも振り返る。

「頭はめちゃくちゃ疲れました。でも、試合を重ねていくごとに、これは本当に瞬間的になんですけど、プレーをしていて『あ、これ、練習と同じ場面だ』みたいなことが起きるわけです。それは、たぶん僕だけじゃなく、一緒にプレーしている他の選手も同じように感じていたと思います。

 練習をやっている時は意図がよくわからなくても、考え方としてはこういうことなんだっていう引き出しが増えていく。だから、練習のための練習じゃなくて、試合でこういう場面が想定されるからやっているんだっていうことも実感できる。自分たちのやれることがどんどん増えていくのが楽しかったですね」

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