ジーコジャパンを土壇場で救った大黒将志の劇的ゴール「パスが来る確信があった」 (5ページ目)
残り試合時間は、ロスタイムを含めても15分足らず。それでも「僕が入る前も、タカさんがヘディングシュートしたり、惜しい場面があった。そこまではボールを持っていけていたんで、残り10分ぐらいあればビッグチャンスが1回もないってことは絶対ない。その1回を決めよう」。そんな思いを抱え、大黒はピッチへと飛び出した。
しかし、一度こう着した試合を解きほぐすのは難しい。大黒はボールに絡むもシュートまでは持ち込めないまま、時間ばかりが過ぎていく。電光掲示板の時間表示は90分を示すと同時に消え、あとは3分のロスタイムを残すのみとなっていた。
「当たり前ですけど、サッカーは試合終了の笛が鳴れば終わり。それまでは全力でやるだけなんで。1回くらいは時計を見ましたけど、その後は見ていませんでした」
そして迎えた90+2分、ゴールを目指すことだけに集中していた大黒に、待望の瞬間が訪れる。
右サイドに開いていた小笠原がゴール前へクロスを送ると、北朝鮮GKがこれをパンチング。弾いたボールは、ペナルティーアーク近くに立つ福西崇史の足元へ飛んだ。
大黒が述懐する。
「練習でミニゲームをやっても、フク(福西)さんとマツ(松田直樹)さんのふたりがメチャクチャうまかったんですよね。だから、ああいうとこでも下手な選手やったらシュートをふかして終わるんですけど、フクさんやったら絶対パスしてくると思ったんです。そういう確信があったというか。だから、ゴールのほうに体を半分向けて待っていました」
点取り屋の嗅覚、とでも言おうか。確信したとおりに福西からのパスがやってくると、大黒は躊躇なく時計回りに体をひねり、左足を振った。
「GKがデカくて、下が弱いのもわかっていたんで、シュートを打つんやったらグラウンダーやなっていう意識でした。絶対下に叩こうと思っていました」
大黒のひと振りで芝に弾んだボールが、北朝鮮GKとDFの間をすり抜ける。ゴールネットが揺れたと同時に駆け出した背番号31は、たちまち歓喜の渦に飲み込まれた。
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