泣き上戸でも「泣いてないから!」
猶本光が最終戦を笑顔で飾りドイツへ (3ページ目)
「24時間サッカーのことを考えて生活していた」と迷いなく言い切る猶本。フィジカル、スピードも時間をかけて強化した。何より体格差のある海外の選手との1対1においても球際に鋭さが生まれた。一歩ずつ着実に重ねてきた。ドイツのフライブルクという自分のプレースタイルと重なるチームに巡り合ったことで海外へ挑戦する状況は整った。
最後まで笑顔で浦和レッズでの試合を終えた猶本光(中央) その成長のすべてが詰まったプレーがこの日の試合であった。安藤が左サイドハーフに入ったことで、猶本と安藤の並びが実現。周りの足が止まっていく後半、ベレーザのエース・田中美南が得意のドリブルでスピードアップする中、先にマークに入ったのは安藤だった。
その直後、反対側には猶本がピタリとついて田中を挟み、攻撃の糸口を断った。かつては安藤と同じトレーニングメニューをこなすことすらできなかった猶本。スピード、判断、タイミングすべてにおいて安藤と呼応していなければ奪えないシーンだった。
試合後、スタンドのファン・サポーターへ向けてマイクを握った猶本。人気が先行し、実力が伴っていないことへの歯がゆさや、ビッグクラブならではの観客の多さ、声援の大きさに驚きながらもその力に後押しされてきたこと、一つひとつを自分の言葉で伝えていく。
これまで、感情が溢れたときは涙をこらえることができなかった。今か今かと次々に彼女の顔をのぞきこみ、涙の有無を確認するチームメイトに「泣いてないから!」と笑顔で応える猶本。最後まで涙はなく、笑顔で「行ってきます!」と締めくくったことに、彼女の決意を見た気がした。
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